SACD ハイブリッド

初演者ヨッフムが作曲者監修のもと

最高のソリスト・合唱団を得て実現させた、

圧倒的な生のエネルギーが爆発するオルフの快作。   

 
オルフ:カルミナ・ブラーナ

オイゲン・ヨッフム(指揮)

ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団・合唱団

価格:3,972円(税込)
ESSG-90206[SACD Hybrid]
DSD MASTERING Super Audio CD層:2チャンネル・ステレオ[マルチなし]
美麗豪華・紙製デジパック・パッケージ使用

SOLD OUT!



■20 世紀で最も有名な合唱曲「カルミナ・ブラーナ」  

 

オルフの「カルミナ・ブラーナ」は、『楽器群と魔術的な場面を伴って歌われる、

独唱と合唱の為の世俗的歌曲』という副題が付いている舞台形式によるカンタータで、

1936 年に完成し、翌1937 年にフラ ンクフルトト歌劇場で初演され、全世界に名前を知られるようになりました。

 

混声合唱、少年合唱、ソプラノ、テノール、バリトンの独唱者、大規模なオーケストラという大きな編成で、

今では20 世紀を代表する合唱曲として知られ、その平明かつインパクトのあるサウンドは、

BGM やドラマ、映画でも頻繁に使われ、クラシック以外のロックやポップスの分野でも愛好者が多い作品です。

不思議なことにこの曲の 初録音は、初演後16 年後の1952 年まで待たねばならず、

それを指揮したのがドイツの巨匠、オイゲ ン・ヨッフム(1902〜1987)でした。

 




オルフの音楽の普及に貢献したヨッフムの手腕     

 

バイエルン地方の音楽一家に生まれ、幼少期からオルガンに親しみ、

ブルックナーをはじめとする 独墺オーケストラ曲やバッハの受難曲の大家であったヨッフムは、

一方で反骨の人であり、第2 次大戦中もドイツに留まり、ナチスの政治的圧力に屈することなく、

当時は一般に上演が禁じられていた

ヒンデミット、バルトーク、ストラヴィンスキーなどの作品を積極的に取り上げました。

 

戦後はバイ エルン放送局の肝いりで組織されたバイエルン放 送交響楽団の設立と育成に力を入れ、

放送を目的とするオーケストラということもあって、バロックから現代音楽まで幅広いレパートリーを取り上げています。

オルフの「カルミナ・ブラーナ」もその一つ で、1952 年10 月にドイツ・グラモフォンのために録音で取り上げ、

翌3 月には歌劇「アンティゴネ」の 抜粋と共に定期公演でも演奏しています。

 

また 1954 年から55 年にかけて、「カトゥーリ・カルミナ」 と「アフロディーテの勝利」を録音し、

「カルミナ・ブラーナ」と合わせて「トリオンフィ」とされる三部作の 世界初録音を成し遂げています。

ヨッフムは、フェルディナント・ライトナー、カラヤン(「アフロディーテの勝利」をミラノ・スカラ座で世界初演)、

クルト・アイ ヒホルン、ラファエル・クーベリック、ヴォルフガング・サヴァリッシュらと並び、

第2 次大戦後のヨーロッパ でオルフ作品の不朽に重要な貢献を話した指揮者の一人でもあります。

 





舞台人ヨッフムの真骨頂を刻んだ1967 年の再録音     

 

その歴史的な初録音の15 年後の1967 年、グスタフ・ルドルフ・ゼルナー演出による

ベルリン・ドイツ・ オペラでの舞台付き上演と並行して収録されたのが当アルバムの「カルミナ・ブラーナ」です。

ヨッフム は、この時期、1966 年と70 年のベルリン・ドイツ・オペラ2 度目・3 度目の来日公演に参加し、

「魔笛」 「後宮からの誘拐」「魔弾の射手」を指揮するなど、ゼルナー総監督のもと、

マゼールが音楽監督をつとめていた同オペラと密接なかかわりを持っており、

1976 年には「マイスタージンガー」の全曲盤を録音しているほどです。

 

やや粗削りながらも、劇場的な感興かつ猥雑なまでの生命力に満ち溢れ、

細部まで熱狂が支配するオーケストラと合唱団を力強く牽引する様は、

謹厳実直なポートレイト写真のイ メージとは大きく異なるヨッフムの真骨頂で、

大きな両腕を振ってオーケストラから巨大な音の魂を引き出すかのような

彼の生前の指揮ぶりを彷彿とさせるものです。

 

 




各パートのキャラクターを最高度に発揮する独唱者陣     

 

独唱者3 人もそれぞれのパートのキャラクターにふさわしい最適の人選がなされています。

特に高域 での馬力と表現力が要求されるバリトン・パートには

ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(1925〜 2012)、

そして情感豊かなソプラノ・パートにはグンドゥラ・ヤノヴィッツ(1937 年生まれ)という

ドイツの戦後世代を代表する名歌手が起用されています。

 

当時最もロブストな声質にあったフィッシャー=ディー スカウの歌唱は他に例のないほど雄弁で、

器楽的なまでの完璧さを持ったヤノヴィッツの美声も作品 に適合したものです。

また丸焼きにされた鳥の悲哀を歌う第12 曲にだけ登場するテノール、ゲルハル ト・シュトルツェ(1926〜1979)は、

1960 年代のローゲやミーメ、ヘロデ王、エギストなどキャラクター・テノール役には欠かせない歌手で、

オルフ作品でも「オイディプス王」初演の主役を任されるなど、作曲者から万全の信頼をいていた歌手でした。

そのディクションの明快な、表情豊かな歌唱は、この曲の特異な性格を顕わにしています。

 

 




最高の状態でのSuper Audio CD ハイブリッド化が実現     

 

録音はベルリンのUfa スタジオで行われました(Ufa とはUniversum Film AG の略称)。

もともと1912 年に映画撮影用に設立されたバーベルスベルク・スタジオ

(世界最古の映画撮影用の大規模なスタジ オ・コンプレックス)で、

フリッツ・ラングの『メトロポリス』を始め数多くの歴史的な映画が撮影された場所で、

その中のスタジオの一つを、1960 年代から70 年代にかけて、

ヴィルヘルム・ケンプの「ベートー ヴェン:ピアノ協奏曲全集」、ベーム指揮のベルク「ヴォツェック」、

ヘンツェ指揮ベルリン・フィルの自作 自演録音(交響曲第1、3〜6 番)、

フィッシャー=ディースカウのシューベルト歌曲集、ギレリスのベー トーヴェンのソナタ集の一部など、

ドイツ・グラモフォンがイエス・キリスト教会が使えない場合、

時折ベ ルリンでの録音会場に使って いました。

 

映画のサウンドト ラック収録用のスタジオであるために、響きも特別な味付けがなくニュートラルで、

ピア ノや多数の打楽器を含む大 編成のオーケストラと少年合唱を含む大規模な合唱、

そして3 名の独唱者からなる膨大 な編成が生み出す幅広いダ イナミック・レンジの変化と

様々な編成の組み合わせに よる音響の多彩さが、あるがままの迫力で捉えられています。

独唱者のディクションもス テレオの音場の中央にクリアに収録され、

オーケストラや合唱の細部のパッセージもきっちりと聴き取ることができます。

名盤ゆえにデジタルの初期からCD化され、

DG Originals の24bit/96kHz リマスタリング盤もあり、

2011 年にはSuper Audio CD シングルレイヤーでも発売されていますが、今回はそれ以来リマスタリングとなります。

 

今回のSuper Audio CD ハイ ブリッド化に当たっては、これまで同様、

使用するマスターテープの選定から、最終的なDSD マスタリングの行程に至るまで、

妥協を排した作業が行われています。

特にDSD マスタリングにあたっては、 DA コンバーターとルビジウムクロックジェネレーターに、

入念に調整されたESOTERIC の最高級機材を投入、またMEXCEL ケーブルを惜しげもなく使用することで、

オリジナル・マスターの持つ情報を余 すところなくディスク化することができました。

 

 

 


「『カルミナ・ブラーナ』の決定盤」     

 

「ゼルナーの演出によってベルリン・ドイツ・オペラで上演され、相当の物議をかもしたものだったが、

それをヨッフムが、視覚と聴覚とを少しのズレもなく再現している。

ソリストたちもこれ以上の適役は考えら れないというベスト・キャストで、『カルミナ・ブラーナ』の決定盤といえよう。」

 (推薦盤、『レコード芸術』1962 年11 月号)

 

「この曲を初録音したヨッフムのモノーラル盤がより力強かったが、この2 度目のステレオ再録音でも、

若干表現全体が温和になったとはいえ、重厚なコーラスが、巧みなソロも含め、

この音楽の本質に近 いものと言えそうである。」

 (『クラシック・レコード・ブック1000 VOL.6 オペラ&声楽曲編』、1986 年)

 

「ロック・ファンにも愛好者が多い『カルミナ・ブラーナ』は、

大オーケストラとコーラスが生み出すシンプルで圧倒的なビートの洪水が魅力の現代曲屈指の名曲。

若手指揮者が新しいオーケストラとやった 新録音の方がよさそうに思えるが、

意外にも硬派の古典指揮者ヨッフムが名門ベルリン・ドイツ・オペラ を率いてのこの1 枚が最高の出来だ。

ヤノヴィッツとフィッシャー=ディースカウという名歌手をソリストに 迎えて、独唱曲の部分が絶品なのも勝因だが、

オーケストラの豪快かつ重厚ななり具合もさすが本場 の魅力。」

(『クラシック不滅の名盤800』、1997 年)

 

「ドイツ人の国民性は生真面目で、融通の利かない頑固さにあると思われている。確かにそんな一面 は否定できない。

しかし、しかめ面の下にユーモアを押し隠していることもまれではない。

また愛の思 いにじっと耐え忍んでいることもある。

そんなユーモアや愛の思いは、ふとしたはずみに躍り出る。ひと たび堰が切られるや、

一気に噴き出る爆発的な開放感は、ドイツの土に根差し、ドイツ人を肌身で知る 指揮者こそ最大限に発揮できる。

ヨッフムほどその表現に適した指揮者はいない。作為や工夫の跡も いささかもない、

ドイツの風土と人情そのものに溶け込んだ演奏だ。

ドイツ人の押し隠したこのよう本心に触れうる指揮者は少なくなってしまった。」

(『クラシック不滅の名盤1000』、2007 年)

 

 「シンプルな和声と苛烈なアクセントを伴う躍動感に満ちたリズムによって、

中世ヨーロッパの精神を現 代によみがえらそうとしたオルフの『カルミナ・ブラーナ』は、

20 世紀の合唱曲の定番として録音に恵ま れてきた。

しかしながら、作品の拠って立つ原始主義が持つインパクトをそのままに再現し得た演奏と して、

ヨッフム2 度目の録音に当たる当盤に匹敵するものはないように思う。

歯切れのよい発声に巧み さを見せる合唱や、圧倒的な技量を誇る独唱陣、エッジの立った合奏が、

スコアを明快に音にしながら も、細部の綾に足許をすくわれることなくひたすらに突き進む迫力ある音響は、

この作品の本質を過た ずとらえて聴き手をフィジカルな興奮へと導く。」

 (『最新版・クラシック不滅の名盤1000』、2018 年)

 



■収録曲

オルフ

カルミナ・ブラーナ(全曲)

 

運命、世界の王妃よ

 1. おお運命よ

2. 吾が運命の傷に泣く

 

第I部 春に

 3. 輝やく春の面は

4. 太陽はすべてをいたわる

5. 見よ、楽しい待ち焦がれた春が

 

草の上で

6. 踊り 1:43

7. 気高き森は花盛りだ

8. 店のおじさん、紅をください

 9. 輪舞:ここで彼女らは踊る、輪になって踊る おいで、おいで私の恋人

10. たとえ世界が全部吾がものになるのでも

 

第II部 居酒屋にて

 11. 心に燃える激しい怒りと苛立ちをもって

 12. 焙られた白鳥の歌:かつて私は湖に住み

13. 予はキューカニーの大僧正じゃ

14. われわれが居酒屋にいる時は

 

第III部 求愛

15. 恋は、どこへでも飛んで行く

16. 昼、夜そしてあらゆるものが

17. 乙女が立っていた

18. 私の心はため息ばかり

19. 若者と乙女が

20. おいで、おいで、さあおいで

21. 私の心のゆれ動く秤の上で

 22. 楽しい季節だ

23. 私のいとしい人

 

ブランチフロールとヘレナ

 24. たたえよ、最も美しい貴い宝

 

運命、世界の王妃よ

25. おお運命よ

 

グンドゥラ・ヤノヴィッツ(ソプラノ)

ゲルハルト・シュトルツェ(テノール)

ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(バリトン)

 

 ベルリン・ドイツ・オペラ合唱団[合唱指揮:ヴァルター・ハーゲン=グロル]

 シェーネベルグ少年合唱団[合唱指揮:ゲルハルト・ヘルヴィヒ]

ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団

指揮:オイゲン・ヨッフム

 

[録音]1967 年10 月、ベルリン、UFA スタジオ

[作曲者立ち合いによる録音][録音演出:グスタフ・ルドルフ・ゼルナー]

 

[初出]139 362(1968 年)

[日本盤初出]SMG2047 (1968 年10 月)

 

[オリジナル・レコーディング]

[プロデューサー]ハンス・ヒルシュ

[レコーディング・エンジニア]クラウス・シャイベ

 

[Super Audio CD プロデューサー] 大間知基彰(エソテリック株式会社)

[Super Audio CD リマスタリング・エンジニア] 杉本一家(JVC マスタリングセンター(代官山スタジオ))

 [Super Audio CD オーサリング] 藤田厚夫(有限会社エフ)

[解説] 諸石幸生 岡俊夫

[企画・販売] エソテリック株式会社

[企画・協力] 東京電化株式会社