SACD ハイブリッド

CDの到来とともに世界を席巻した

デュトワ&モントリオール響の快進撃。

その原点となったラヴェルとドビュッシーは

フランス音楽の理想の姿を捉えた名録音。  

 
[ボレロ]

ドビュッシー:《海》、

牧神の午後への前奏曲

ラヴェル:《ダフニスとクロエ》第2組曲、

亡き王女のためのパヴァーヌ、ボレロ

シャルル・デュトワ(指揮)

モントリオール交響楽団

価格:3,972円(税込)
ESSD-90207[SACD Hybrid]
DSD MASTERING Super Audio CD層:2チャンネル・ステレオ[マルチなし]
美麗豪華・紙製デジパック・パッケージ使用

SOLD OUT!



■デジタル録音と共に歩んだデュトワ+モントリオールの名盤  

 

たとえばエルネスト・アンセルメとスイス・ロマンド管弦楽団の録音の成功が、

ステレオ録音というテクノロジーの発達と切り離せないのと同じく、

シャルル・デュトワとモントリオール交響楽団の一連のデッカ録音ほど、

デジタル録音という画期的な技術の完成と発展と密接に結びついて

爆発的に評価を高めた演奏芸術はほかになかったといえるでしょう。

 

「北米のパリ」と称されるカナダ第2の都市モントリオールを拠点に1935年に遡る歴史を持ち、

1960年代にはズービン・メータを音楽監督に迎えて飛躍したものの、

その後は国際的な舞台からは長らく遠ざかっていたモントリオール交響楽団が、

1936年スイス・ローザンヌ生まれのシャルル・デュトワを音楽監督に迎えたのが1977年のこと。

 

抜群の耳を持つ職人気質のデュトワは、

士気の衰えたオーケストラに根気よく地味な訓練を徹底し、

ごく短期間で高い音楽性を備えた機能的なアンサンブルへと育て上げました。

このコンビが1980年から2004年まで約四半世紀にわたって続いた

デッカへのフランス音楽を中心とする一連の録音は、

折しも世界的に普及し始めたデジタル録音によるコンパクト・ディスクでリリースされ、

彼らの名を世界的なものにしたのでした。

 




デュトワ+モントリオールの凄さを世界に印象付けた「ダフニスとクロエ」     

 

1980年7月のデュトワとモントリオール響とのデッカへの最初のセッションでは

チョン・キョンファとのチャイコフスキーとメンデルスゾーン、

ギタリストのカルロス・ボネルとのロドリーゴという協奏曲が収録されましたが、

翌8月にはいよいよこのコンビによる本格的なプロジェクトが開始され、

その第1弾に選ばれたのがラヴェルの「ダフニスとクロエ」でした。

 

長らくこのコンビのプロデュースを手掛けたデッカのレイ・ミンシャルによると、

デュトワこそは「実力があり、カリスマ性を備え、

すべてのコンセプトを本当の成功へと導く能力を持つ音楽家」であり、

デッカは、このコンビに、LP時代にレーベルのフランス音楽の重要なカタログとなった

アンセルメとスイス・ロマンド管のレパートリーを、デジタル時代に継承・再現させることにしたのです。

 

まずは正確なリズム、音程、ハーモニー、美しく統御された音色の多彩さ、

音楽的なオーケストラ・バランスを基礎に、弦楽器の刻み一つまで疎かにされない、

職人的な緻密なエクセキューションを積み重ね、

作品のあるがままの姿を再現する姿勢が基本にありつつ、

デュトワの色彩感に対する優れたセンスは、

決して無味乾燥にならないエンターテインメント性を兼ね備えていました。

 

マスとしてのオーケストラ・サウンドの見事さのみならず、

随所に聴かれるフルートのティモシー・ハッチンスらに代表される

木管・金官奏者の冴えたソロが聴き手の耳をそばだたせ、

たとえテクスチュアが複雑になってもそれぞれのパートがごくごく明晰に演奏され、

決して音が濁らないというある意味オーケストラ演奏の一つの理想に辿り着いていたのです。

当ディスク収録の「ダフニスとクロエ」第2組曲は

この全曲盤から取られたもので合唱団が起用されています。

ラヴェルが書いた一つ一つの音符がそうあるべき理想の重さと長さで演奏され、

その積み重なりが、圧倒的な説得力を生み出しています。

 





快進撃が続く「ボレロ」、そしてドビュッシーへ     

 

「ダフニス」は日本のレコード・アカデミー賞を受賞したのをはじめ、

世界各地で絶賛され、このコンビの凄さを力強くアピールしました。

その成功を受け、翌年には「ボレロ」を含む2枚目のラヴェル・アルバムが録音され、

「フランス音楽の伝統の正当な再現者」としてのデュトワとモントリオール響の名声が確立します。

 

それ以降、すでにこのシリーズでハイブリッド化したサン=サーンスの「オルガン」交響曲のほか、

「ローマ三部作」、「シェエラザード」、「春の祭典」など、

オーケストラの名義性と色彩感を最大限に発揮できるレパートリーを次々に録音していくことになります。

 

ドビュッシーのアルバムが録音されたのはさらにしばらく経ってからのことで、

1988年に「映像」と「夜想曲」が、翌1989年には「海」「牧神の午後への前奏曲」などが録音され、

後者は日本で1990年度レコード・アカデミー賞を受賞したのでした。

 

 




最高の状態でのSuper Audio CDハイブリッド化が実現    

 

デュトワとモントリオール交響楽団のデッカ録音は全て、

モントリオールから20マイル(約50キロ)西部にある聖ユスターシュ教会で行われました。

18世紀後半に典型的なフランス=カナダ様式で建立されたこの教会は、

オーケストラ録音用としてはやや狭かったものの、天井が高く響きの抜けがよく、

このコンビの録音場所としては理想的でした。

 

アナログ時代に世界最高峰の音響とされた

ロンドンのキングスウェイ・ホールと比肩することのできる録音会場と評価されたこともあるほどで、

教会という言葉から想像されがちな残響過多なことは全くなく、

細部が明晰に保たれつつ、適度な美しい響きがついており、

デッカの名エンジニア、ジョン・ダンカリーの技の冴えを聴きとることが出来ます。

 

ラヴェル、ドビュッシーともに発売当初から優秀なデジタル録音として高く評価されたため、

これまでリマスターされたのは「ダフニス」全曲とパヴァーヌなどが

「デッカ・オリジナルス」で24ビット・リマスターされたのみで、

今回はそれ以来の、そして初めてのDSDリマスタリングとなります。

 

今回の Super Audio CD ハイブリッド化に当たっては、

これまで同様、使用するマスターテープ の選定から、

最終的な DSD マスタリングの行程に至るまで、妥協を排した作業が行われています。

特 に DSD マスタリングにあたっては、

DA コンバーターとルビジウムクロックジェネレーターに、

入念に調整された ESOTERIC の最高級機材を投入、

また MEXCEL ケーブルを惜しげもなく使用することで、

オリジナル・マスターの持つ情報を余すところなくディスク化することができました。

 

 

 

 


「今は完全に失われてしまったフレンチ・サウンドを、カナダのオケが凍結させたように維持」     

 

「“夜明け”の盛り上がりと“パントマイム”のフランス式フルートの軽くそして官能的な音色の魅力は

ここにもはっきりと刻まれている。ここで示された彼らの実力が、

一部で囁かれた『録音の魔術』ではなかったことが85年の初来日時に確かめられたことは幸いだった。」

『レコード芸術別冊・クラシック・レコード・ブックVOL.1交響曲編』1985年

 

 「音色一つとっても、より純度を高めた清澄な質感があるし、

アンサンブルにしても全般にわたって精度が高い。

デュトワはそうした同オケの美質を生かし、懐古的ではない現代的な感性と感覚で息づかせる。

すなわち、細部まで鮮明でありながら、聴こえてくる音楽は夢想的。唯一無二の美演である。」

 『ONTOMO MOOK クラシック名盤大全 交響曲編』1997年

 

「デュトワの音楽監督就任以来、実力をつけてきたモントリオール響の真骨頂を聴くことのできる最良の1枚。

両者はとりわけラヴェルの演奏を残しているが、

デュトワの計算しつくされた巧みな設計とオーケストラの一糸乱れぬアンサンブルは、

聴く者の心を魅了せずにはおかない。美しい響きを十全にとらえた録音も第1級のもの。」

 『クラシックCDカタログ89前期』1989年

 

 「今は完全に失われてしまったフレンチ・サウンドを、

遥か数千キロを隔てたカナダのケベックのオケが、

凍結させたように維持していたのは脅威としかいうほかない。

《海》では金管の合奏が実に柔らかくまろやかで、全く騒々しさを感じさせない。

そして弦も木管も反応がデリケートで、まさに痒いところに手が届くといった風情があり、

その独特の筆致が一般の愛好家も魅了するところだろう。

弱音の美しさを生かした、ニュアンス豊かな表現が心憎く、

いかにもフランス近代の作品らしいツボにはまったデュトワ流の音楽づくりが成功した例だ。」

「(ダフニスでは)リズムを明快に弾ませながら瀟洒なセンスを漂わせて、

バランス感覚に富んだ名演を繰り広げており、「夜明け」から、

クライマックスの「全員の踊り」へと至る巧みな盛り上げ方も聴きどころになっている。

ラヴェル特有の高度に洗練されたオーケストレーションを、

明晰かつ周到に描き分けることによって、

スコアそれ自体が孕んでいる夢幻的な詩情が立ち上がるあたりの見事さも特筆ものであろう。

オーケストラとコーラスも優秀だ」

 『クラシック不滅の名盤1000』2007年

 

 「25年にわたったこのコンビが作り出した繊細で多彩な音色感や、

まるでエーテルが漂っているかのような一種の浮遊感を持った独特の響きは、

フランスのオーケストラ以上にフランスの音を奏でるオーケストラと讃えられたものだが、

その特質を最善に生かすことができたのは、やはりフランスの作品である。

ドビュッシーの作品はその最たるもので、《牧神の午後への前奏曲》における、

空間に馥郁たる香りがたゆとうような、甘く柔らかな、しかも透明感に満ちた響き、《海》における、

情景を彷彿とさせるような描写の巧みさなど、すべてが超一流である。」

 『最新版クラシック名盤大全 交響曲・管弦楽曲編』2015年

 

 「“フランスのオーケストラよりもフランス的”と異名をとった

デュトワ&モントリオール響はラヴェル演奏で名を上げた。

始まったばかりのデジタル録音の恩恵を受けたこともあり、

その鮮やかな音響と洗練の行き届いた表現に心酔したリスナーも多いはず。」

「デュトワ&モントリオール響のドビュッシー録音はいずれも、

柔らかい詩情と明晰さの絶妙なブレンドに惹き込まれる名演揃いだと思うが、

《牧神の午後への前奏曲》は冒頭のフルート独奏、ハッチンズの吹くひとふし、

その極上の美演だけでも歴史に残る。

作品のスケール感を曖昧さもなく描き切った《海》の凄さは、

デュトワの激しい彫琢こそが達し得た境地だと思う。」

『最新版・クラシック不滅の名盤1000』2018年

 



■収録曲

ドビュッシー

《海》− 3つの交響的スケッチ

1  I. 海の夜明けから正午まで

2  II. 波の戯れ

3  III. 風と海の対話

4  牧神の午後への前奏曲

 

ラヴェル

バレエ音楽《ダフニスとクロエ》第2組曲

5  第1曲:夜明け

6  第2曲:パントマイム

7  第3曲:全員の踊り

8  亡き王女のためのパヴァーヌ

9  ボレロ

 

モントリオール交響楽団

モントリオール交響楽団合唱団(ダフニスとクロエ)

指揮: シャルル・デュトワ

 

[録音]

1989年5月(ドビュッシー)

 1980年8月(ラヴェル:ダフニス)

1981年7月(ラヴェル:ボレロ)

1983年5月(ラヴェル:パヴァーヌ)

モントリオール、聖ユスターシュ教会

 

[初出] ドビュッシー 430 240-2(1990年)

ラヴェル「ダフニス」400 055-2(1982年)

 ラヴェル「亡き王女のためのパヴァーヌ」410 254-2(1984年10月)

ラヴェル「ボレロ」410 010-2(1983年)

 [日本盤初出]ドビュッシー POCL1044(1990年10月25日)

ラヴェル「ダフニス」(全曲版として)400 055-2(輸入盤)[CD](1982年10月20日)

ラヴェル「亡き王女のためのパヴァーヌ」L28C1796[LP]410 254-2(輸入盤)[CD] (1984年10月25日)

ラヴェル「ボレロ」L28C1416[LP](1983年3月25日)

[オリジナル・レコーディング] [プロデューサー]レイ・ミンシャル

 [バランス・エンジニア]ジョン・ダンカリー(ラヴェル、ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲)

ジェイムズ・ロック(ドビュッシー:海)

 [Super Audio CDプロデューサー]大間知基彰(エソテリック株式会社)

 [Super Audio CDリマスタリング・エンジニア]杉本一家

(JVCマスタリングセンター(代官山スタジオ))

 [Super Audio CDオーサリング]藤田厚夫(有限会社エフ)

 [解説]諸石幸生、浅里公三

 [企画・販売]エソテリック株式会社

 [企画・協力]東京電化株式会社