SACD ハイブリッド

20世紀後半のバッハ演奏様式を確立し主導した立役者による

峻厳極まりないブランデンブルク全曲。   

 
J.S.バッハ:ブランデンブルク協奏曲(全曲)

カール・リヒター(指揮)

 ミュンヘン・バッハ管弦楽団

(2枚組)  

価格:7,944円(税込)
ESSA-90221/2[SACD Hybrid]
DSD MASTERING
Super Audio CD層:2チャンネル・ステレオ[マルチなし]
美麗豪華・紙製デジパック・パッケージ使用

SOLD OUT!



■ドイツのバッハ伝統を20世紀に継承したカール・リヒター  

 

リヒターは現在のドイツ・ザクセン州プラウエンに牧師の子として生まれ、

11歳のときドレスデン聖十字架教会付属学校に入り、有名なドレスデン十字架聖歌隊で少年時代を過ごしました。

 

ライプツィヒ音楽学校では聖トーマス教会のカントルであった

カール・シュトラウベ、ルドルフ・マウエルスベルガー、ギュンター・ラミンに師事。

 

1949年には聖トーマス教会のオルガニストに就任、という経歴は、

まさに脈々伝承されてきたドイツのバッハ演奏の伝統の本流を体得した音楽家であることを証明しています。

 

リヒターの演奏活動が飛躍するきっかけとなったのは、

1951年にミュンヘンの聖マルコ教会のオルガニストのポストを得たことで

当時は西ドイツだったミュンヘンに移住したことでしょう。

ニュルンベルク近郊のアンスバッハで開催されていたバッハ週間で指揮した

ハインリヒ・シュッツ合唱団を母体にして「ミュンヘン・バッハ合唱団」を組織し、

さらに1955年にはバイエルン国立歌劇場管、バイエルン放送響、

ミュンヘン・フィルなどのメンバーをピックアップして「ミュンヘン・バッハ管弦楽団」を設立し、

バッハの合唱音楽の理想的な演奏を追求することになります。

 




ドイツ発信のバッハ演奏解釈の確立へ     

 

1954年リヒターは、シュッツの 「ムジカーリッシュ・エクセークヴィエン」を

ドイツ・グラモフォンが設立した音楽史専門のレーベル、「アルヒーフ」(ARCHIV)に録音し、

レコード・デビューを果たします。アルヒーフ(文字通り、「保存記録」「保管庫」などを意味する)は

第2次大戦後の1947年にバッハ作品の全曲録音を目標とするとしてスタートし、

その後グレゴリオ聖歌からウィーン古典派までその領域を拡げ

「世界初」の古楽レーベルとして古楽振興に尽くすことになりました。

 

 リヒターが何よりも幸運だったのは、この新興レーベルのアルヒーフが

カタログ拡充のための新録音を必要としていたこと、

その時期がちょうどLPレコード、そしてステレオ録音の普及、

バロック音楽ブームの興隆と軌を一にしていたことでしょう。

 

演奏解釈の思潮面でも、ナチスの災禍を経たことで第2次大戦前の価値観を捨て去り、

新たな様式の確立が求められるという、いわば時代のニーズがありました。

リヒターはその期待に応えるように、バッハ作品の演奏解釈の研究と実践に没頭しました。

リヒターは19世紀末以来の恣意的なテンポの揺れや過度の感情移入を排し、

安定した正確なリズムを保持し、記譜通りの音価を明晰に再現・発音することで、

混濁しないクリアな声部バランスを指向し、作品のあるべき姿を追求しその本質を抉り出す姿勢を貫くことで、

20世紀後半のバッハ演奏様式をドイツから発信し、それが演奏旅行やレコード録音を通じて世界中に普及、

その価値観が共有されるようになったのです。

 




リヒター60年代の最盛期の姿を記録したブランデンブルク     

 

こうしたリヒターの厳格な姿勢が最初に結実したのが1958年録音の「マタイ受難曲」でした。

リヒターの解釈はイエスの受難を通じて人間の弱さと神の慈愛を歌い上げる

この大作の20世紀後半の全ての演奏の規範となりました。

 

その後1960年代一杯を通じてバッハの声楽曲、管弦楽曲、室内楽曲、

器楽曲(チェンバロ、オルガン)を網羅するかのように録音が継続され、

バッハ演奏家としてのリヒターの令名を世界的なものにしました。

 

そうした60年代のリヒターのバッハ解釈の結実の一つが、

1967年1月にほぼ2週間という時間をかけてじっくりと収録されたブランデンブルク協奏曲の全曲盤といえるでしょう。

現在行われているバロック・アンサンブルによる演奏と比較すると

かなり規模の大きな編成の室内弦楽オーケストラと、

基本的にモダン楽器(ホルンはクレジットによると「ナチュラルホルン」)を使用するソロが対峙するという協奏曲、

もしくは合奏協奏曲としてのバランスが保たれています。

 

ソロには、ホルンのヘルマン・バウマン、フルートのオーレル・ニコレ、

トランペットのピエール・ティボー(ホーカン・ハーデンベルガー、ラインホルト・フリードリヒの師)、

リコーダーのハンス=マルティン・リンデ(この録音の四半世紀後には

自らのアンサンブルでブランデンブルク全曲を録音)など

1960年代ならではの豪華な奏者が起用されているのもこの録音のポイントです。

第5番のチェンバロ・ソロはもちろんリヒターが担当し、

第1楽章のカンデンツァでは圧巻の演奏を繰り広げています。

 




最高の状態での Super Audio CD ハイブリッド化が実現     

 

録音が行われたのは、

リヒターとミュンヘン・バッハ管の録音のメイン会場の一つとなったミュンヘン大学の講堂で、

近めの距離感で左右上下いっぱいに広がる中規模のオーケストラの

ずっしりとした低音の上に築き上げられる厚みのある響きをメインにして、

その前面に各曲のソロを明確にクローズアップしています。

 

この大きな響きの中で、オーケストラの各パートは極めて明晰に捉えられ、

リヒター自身とその愛弟子ヘドヴィヒ・ビルグラムが分担するコンティヌオの

モダン・チェンバロの鋭い響きも埋もれることなくピックアップされています。

 リヒターの厳格なまでの音楽の統御が実際の音としてもはっきりと実感できるのが何よりの魅力と言えるでしょう。

 

エンジニアはDGのアナログ時代を代表するクラウス・シャイベ、

現場のプロデュースは1970年代以降アバドのプロデューサーとしても活躍したライナー・ブロックが担っています。

アナログ最盛期の録音で、初めてCD化されたのは1989年で、

その後2002年には「オリジナルス」でCD時代初めてのリマスターが行われ、

2004年にはSuper Audio CDハイブリッドでも発売されています。

 

今回のSuper Audio CDハイブリッド化に当たっては、これまで同様、

使用するマスターテープの選定から、最終的なDSDマスタリングの行程に至るまで、

妥協を排した作業が行われています。 特にDSDマスタリングにあたっては、

DAコンバーターとルビジウムクロックジェネレーターとに、

入念に調整されたESOTERICの最高級機材を投入、

またMEXCELケーブルを惜しげもなく使用することで、

オリジナル・マスターの持つ情報を余すところなくディスク化することができました。

 

 



「20世紀のバッハ演奏史に不滅の足跡を残したモニュメンタルな録音」    

 

「リヒターはバッハを個性的にきかせる。スタイルはあくまでも復古的。

速いテンポときびしいダイナミックは現代的、そして内部に吹き荒れる精神はあえていえばロマン的である。

これはリヒター独自のユニークな世界であり、

この表現を完成させるために自己と激しく闘ってきた一つの決算が、この「ブランデンブルク」である。」

推薦盤『レコード芸術』1969年2月号


「リヒターならではの正統かつ完璧な作品把握と、

生命感みなぎる燃焼度の高い表現とが結びついた「ブランデンブルク協奏曲」の名演である。

音楽の進行が各曲とも多彩でドラマティックな起伏に溢れてはいるが、

19世紀的な主情的な表現は一切なく、ひたすらバッハの音楽として鳴り渡る。

もちろんそれは第一にリヒターの意志の徹底がこの演奏を一分の隙もないものにしているのだが、

同時にニコレ、バウマンらドイツ一流の器楽の名手も力も大いにものを言っている。

全6曲中の白眉はやはり第5番である。」

 『クラシック・レコード・ブック1000 VOL.3 協奏曲編』1986年

 

「カール・リヒターとミュンヘン・バッハ管弦楽団によるアルヒーフへの一連のバッハ作品の録音は

レコード史上に特筆すべき偉業の一つであったと思う。

オリジナル楽器による演奏が定着する以前の時代の最高峰を極めた演奏であったことは言うまでもないが、

作品と作曲者への深い敬愛の念に裏打ちされた真摯で峻厳なその演奏は、

今日でも強い説得力をもって聴き手に訴えかけてくる。

娯楽性や愉悦性とは無縁な生真面目そのものの解釈だが、

バッハの音楽の数学的・論理的ともいうべき緻密なテクスチュアの綾が完璧な音楽美のうちにくまなく再現される。

バッハの高邁な音楽精神を誰にも納得させるに足る、志の高い演奏である。」

 『クラシック不滅の名盤800』1997年

 

「リヒターが精神的・肉体的におそらくピークを迎え、きりりと引き締まった最上の演奏を聴かせた時期である。

音楽はあくまでもゲルマン的で峻厳、しかしバッハ固有の愉悦と祈りが6曲の隅々までくまなく広がっている。

それに加えて、気迫溢れるドラマティックなタッチは、

彼の受難曲やカンタータの演奏に一脈通じるものといえるだろう。

ヴァイオリンのシュネーベルガー、フルートのニコレ、リンデら、

真正の演奏家たちが一堂に会しているのもこの全集のかけがえのない魅力。

20世紀のバッハ演奏史に不滅の足跡を残したモニュメンタルな録音の一つである。」

 『ONTOMO MOOK クラシック名盤大全 協奏曲編』1998年

 

「ここに聴かれる演奏も発想がロマンティックで、独特の思い入れと切れ込みの鋭い力感があり、

その説得力は極めて大きい。古楽系の演奏とは無縁の、

伝統的なドイツのバッハだが、強弱や緩急のコントラストがはっきりしているなど、

方法論としては共通している点も多い。「両極端は一致する」の原則に、

そっくりそのまま当てはまるケースといえる。メンバーにもスタープレイヤーを配し、

現在でも最もスタンダードな名盤であろう。」

『クラシック不滅の名盤1000』2007年

 

 「ミュンヘン・バッハ管(モダン楽器)の実に整然とした急進的なアンサンブルで、

これもリヒターの名盤の一つである。

模範的と言ってもよいほどの的確なテンポと明確なリズムで実に折り目正しい演奏であるが、

それ以上に音楽の生命力や躍動感が隅々にまで浸透している。

いわゆる正統的な演奏であるが、古い衣を取り払った実に新鮮な生きた正統派の演奏といなっている。

ソリストもフルートのニコレをはじめとした名手たちが、その輝かしい高度なテクニックを各協奏曲で披露している。

ソロとオーケストラは実に密度が高いが決して無機的ではなく血が通っており、

第5番ではリヒター自身のチェンバロで第1楽章の長大なカデンツァを見事に弾き切っている。」

『最新版・クラシック不滅の名盤1000』2018年

 

 


■収録曲

DISC 1

 J.S. バッハ

ブランデンブルク協奏曲 第1番 へ長調 BWV1046

1:第1楽章 楽章指定なし

2:第2楽章 アダージョ

3:第3楽章 アレグロ

4:第4楽章 メヌエット – トリオ I – ポラッカ – トリオ II

[独奏]ヘルマン・バウマン(ナチュラルホルン 1)、ヴェルナー・マイエンドルフ(ナチュラルホルン 2)、

マンフレート・クレメント(オーボエ)、カール・コルビンガー(ファゴット)、

ハンスハインツ・シュネーベルガー(ヴァイオリン)

 [コンティヌオ]ヘトヴィヒ・ビルグラム(チェンバロ)

 

ブランデンブルク協奏曲 第2番 へ長調 BWV1047

5:第1楽章 楽章指定なし

6:第2楽章 アンダンテ

7:第3楽章 アレグロ・アッサイ

[独奏]ピエール・ティボー(トランペット)、ハンス=マルティン・リンデ(ブロックフレーテ)、

マンフレート・クレメント(オーボエ)、ハンスハインツ・シュネーベルガー(ヴァイオリン)

 [コンティンヌオ]ヘトヴィヒ・ビルグラム(チェンバロ)

 

ブランデンブルク協奏曲 第3番 ト長調 BWV1048

8:第1楽章 楽章指定なし

9:第2楽章 アダージョ

10:第3楽章 アレグロ

[コンティヌオ]ヘトヴィヒ・ビルグラム(チェンバロ)

 

 

DISC 2

J.S. バッハ

ブランデンブルク協奏曲 第4番 ト長調 BWV1049

1:第1楽章 アレグロ

2:第2楽章 アンダンテ

3:第3楽章 プレスト

[独奏]ハンス=マルティン・リンデ、ギュンター・ヘラー(ブロックフレーテ)、

ハンスハインツ・シュネーベルガー(ヴァイオリン)

 [コンティヌオ]ヘトヴィヒ・ビルグラム(チェンバロ)

 

ブランデンブルク協奏曲 第5番 ニ長調 BWV1050

4:第1楽章 アレグロ

5:第2楽章 アフェットゥオーソ

6:第3楽章 アレグロ

 [独奏]オーレル・ニコレ(フルート)、ハンスハインツ・シュネーベルガー(ヴァイオリン)、

カール・リヒター(チェンバロ)

 

ブランデンブルク協奏曲 第6番 変ロ長調 BWV1051

7:第1楽章 楽章指定なし

8:第2楽章 アダージョ・マ・ノン・トロッポ

9:第3楽章 アレグロ

 [独奏]クルト=クリスティアン・シュティール、インゴ・ジンホーファー(ヴィオラ)、

オスヴァルト・ウール、ヨハネス・フィンク(ヴィオラ・ダ・ガンバ)、

フリッツ・キスカルト(チェロ)

 [コンティヌオ]カール・リヒター(チェンバロ)、ヘルベルト・ドゥフト(コントラバス)

 

[使用楽譜]ベーレンライター・バッハ新全集版VII 第2巻、ハインリヒ・ベッセラー編(1956年)

 [録音]1967年1月9〜16日、1月19日〜25日、ミュンヘン、音楽大学

 [初出]198 438〜9(1968年)

 [日本盤初出]198 438〜9(1968年12月)[輸入盤]、MA5008〜9(1976年4月1日)[国内プレス]

 [オリジナル・レコーディング]

 [プロデューサー]カール・ファウスト

[ディレクター]ライナー・ブロック

[レコーディング・エンジニア]クラウス・シャイベ

 [Super Audio CDプロデューサー]大間知基彰(エソテリック株式会社)

 [Super Audio CDリマスタリング・エンジニア] 東野真哉(JVCマスタリングセンター(代官山スタジオ))

[Super Audio CDオーサリング] 藤田厚夫(有限会社エフ)

 [解説] 諸石幸生 浅里公三

 [企画・販売]エソテリック株式会社

 [企画・協力] 東京電化株式会社