オリジナルマスターサウンドの再生を追及。
「Master Sound
Works= マスターサウンドワークス」
オリジナルマスターサウンドへの飽くことなきこだわりと、Super Audio
CDハイブリッド化による圧倒的な音質向上で好評のエソテリックによるデッカ、ドイツ・グラモフォンそしてEMIなどの名盤復刻シリーズ。発売以来LP時代を通じて決定的名盤と評価され、CD時代になった現代にいたるまで、カタログから消えたことのない名盤を高音質マスターからリマスタリングし、世界初のSuper
Audio CDハイブリッド化を実現してきました。
今回は、20世紀後半の音楽演奏の重要な潮流のひとつであるオリジナル楽器演奏のパイオニアたちを積極的に紹介したSEONレーベルの名盤で、オリジナル楽器の録音が当シリーズで発売されるのは今回が初めてです。
■オリジナル楽器演奏を世に広めたSEONレーベル初期の名盤
このアルバムは、1960年代からテレフンケン・レーベルで、ニコラウス・アーノンクールやグスタフ・レオンハルトをはじめとするオリジナル楽器演奏の録音をいち早く手掛けてきた名プロデューサー、ヴォルフ・エリクソンが、1972年に自前のレーベルとして設立したSEON初期の名盤で、オリジナルはLP3枚にヘンデルの作品1のソナタを中心に木管のためのソナタなど17曲を集成したアルバムでした。ブロックフレーテとフラウト・トラヴェルソを吹き分けるフランス・ブリュッヘンを中心に、チェンバロとオルガンのボブ・ファン・アスペレン、チェロのアンナー・ビルスマと、オリジナル楽器演奏の巨匠たちが結集し、緻密かつ生き生きとした躍動感あふれる演奏でヘンデル若き日の溌剌とした筆致を再現しています。今回のSA-CDハイブリッド化に当たっては、1987年に初めてCD化されたときのカップリングを踏襲して、ブリュッヘンがソロをとっている中から選りすぐった8曲を収録しています。
■ブロックフレーテ、フラウト・トラヴェルソ奏者ブリュッヘンの真骨頂
「リコーダーのライオン」と異名をとったフランス・ブリュッヘンは1934年アムステルダム生まれ。1950年代より活動を開始し、リコーダー(ブロックフレーテ)による演奏の可能性を格段に広めたオリジナル楽器演奏の草分け的な存在です。レオンハルト、ビルスマ、アーノンクール、シギスヴァルト、ヴィーラント、バルトルドのクイケン兄弟らとともに、第2次世界大戦後オランダを中心にヨーロッパで湧きあがったオリジナル楽器演奏の研究と実践の牽引者の一人であり、ブリュッヘンの卓越した技巧と千変万化する音色は、それまで古めかしいイメージがつきまといがちだったバロック時代の作品のイメージを塗り替え、現代に鮮烈によみがえらすことになりました。ブリュッヘンは1960年代にはテレフンケン・レーベルに、1970年代にはSEONレーベルに数多くの録音を残したのち、1981年にはオリジナル楽器を使用したオーケストラ、18世紀オーケストラを組織して指揮者に転向し、70歳を過ぎた今もその洞察力あふれる演奏で聴衆を魅了しています。これらヘンデルの作品もブリュッヘンお得意のレパートリーで、このうち4曲は1962年にレオンハルト、ビルスマとテレフンケンに旧録音がありますが、このSEON盤は、ソリストとして絶頂期にあったブリュッヘンの真骨頂を示しています。
■最高の状態でのSACDハイブリッド化が実現
収録はアムステルダム近郊のハールレム(ハーレム)にあるドープスヘジンデ教会で行われました。ここは1960年代から特にオリジナル楽器演奏の録音に頻繁に使われ始め、数多くのオリジナル楽器の名盤を生み出してきた教会で、響き過ぎず穏やかな温かみを備えたアコースティックは、オリジナル楽器の繊細な響きを余すところなく捉えるのに最適な特質を備えています。ブロックフレーテとフラウト・トラヴェルソのソロを中心に、チェンバロとオルガン、そしてチェロというトリオ編成が奏でる美しい響きが、まさに神業ともいえる絶妙な距離感とバランス、明晰さを保って収録されています。
今回のSA-CDハイブリッド化に当たっては、これまでのエソテリック企画同様、使用するマスターテープの選定から、最終的なDSDマスタリングの行程に至るまで、妥協を排した作業が行われました。特にDSDマスタリングにあたっては、DAコンバーターとルビジウムクロックジェネレーターとに、入念に調整されたエソテリック・ブランドの最高級機材を投入、また同社のMEXCELケーブルを惜しげもなく使用することで、オリジナル・マスターの持つ情報を伸びやかなサウンドでディスク化することに成功しています。
■「この時点で笛という楽器の可能性を極めつくしたブリュッヘン」
『リコーダー、トラヴェルソなどの独奏楽器のみならず、通奏低音にまで、ヘンデル時代のイギリスの名工ステインズビー父子製作のオリジナル楽器を揃えて、まさに「ヘンデルがイメージした通り」と思える品格と情調をふんだんに湛えた演奏が展開されている。ブリュッヘンのしっとりした横笛をはじめ、共演者たちも感興をともにした絶品である。』
(佐々木節夫、『レコード芸術別冊・クラシック・レコード・ブック 室内楽曲編』1985年)
『ブリュッヘンがフルートのヴィルトゥオーゾだった時代の名盤のひとつ。ヘンデルの笑みをたたえたようなあたたかい音楽を、楽器がまるで身体の一部であるかのように自由に歌わせている。それは卓越した歌手がヘンデルの名アリアを歌っている情景を思い起こさせる。オリジナル楽器の音色はここでもほれぼれとするばかり。古い楽器の使用はペダンティックな興味によるのではなく、もっとも雄弁にヘンデルの音楽を表現する手段はそれしかないからである。この時点でブリュッヘンは笛という楽器の可能性を極めつくしていたのだろう。これを聴くと彼が18世紀オーケストラを結成し、指揮へ転向した理由がよく判るような気がする。』
(岡本稔、『レコード芸術別冊・クラシック名盤大全 室内楽曲編』1999年)
■収録曲
ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル
1. ソナタ ハ長調作品1-7
2. ソナタ
イ短調(ハレ・ソナタ第1番)
3. ソナタ イ短調作品1-4
4. ソナタ ト長調作品1-5
5. ソナタ ホ短調作品1-1b
6.
ソナタ ト短調作品1-2
7. ソナタ ロ短調(ハレ・ソナタ第3番)
8. ソナタ ヘ長調作品1-11
< 演 奏
>
フランス・ブリュッヘン(ブロックフレーテ[1、3、6、8]、
フラウト・トラヴェルソ[2、4、5、7])
ボブ・ファン・アスペレン(チェンバロ[1、3、4、5、]、
オルガン[2、6、7、8])
アンナー・ビルスマ(チェロ)
<使用 楽器>
ブロックフレーテ:
トーマス・ステインズビー(ロンドン、1700年頃)
フラウト・トラヴェルソ:トーマス・ステインズビーJr.(ロンドン、1740年頃)
チェンバロ:J.D.ドゥルケンによる(アントワープ、1745年)
オルガン:クラウス・アーレント(ドイツ、レール、1973年)
チェロ:マッティオ・ゴフリラー(ヴェネツィア、1699年)
[録音]
[録音]
1973年11月、1974年1月、2月
ハールレム(ハーレム)、ドープスヘジンデ教会 (アナログ・レコーディング)
[日本盤LP初出]MLG-9107〜09(1976年10月)
[CD初出]R32S-1007(1987年1月)
[オリジナルレコーディング/プロデューサー] ヴォルフガング・エリクソン
[レコーディング/エンジニア] ディーター・トムセン
[Super Audio CDプロデューサー] 大間知基彰 (エソテリック株式会社)
[Super Audio CDリマスタリング・エンジニア]
杉本一家(ビクタークリエイティブメディア株式会社 マスタリング・センター)
[Super Audio CDオーサリング] 藤田厚夫(有限会社エフ)
[解説] 諸石幸生、村原京子
[企画協力] 東京電化株式会社
[企画/販売] エソテリック株式会社