SACD ハイブリッド

バックハウス+ベーム+ウィーン・フィル。
20世紀トドイツ音楽の伝統が結晶化された永遠不滅のブラームスの名演。
理想的なマスタリングを経て鮮烈によみがえる。
  
 

ヴィルヘルム・バックハウス(ピアノ)
エマヌエル・ブラベッツ(チェロ)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:カール・ベーム



価格:3,300円(税込)
ESSD-90084[SACD Hybrid]
DSD MASTERING
Super Audio CD層:2チャンネル・ステレオ[マルチなし]
美麗豪華・紙製デジパック・パッケージ使用


SOLD OUT!


最高のブラームス  

  ヴィルヘルム・バックハウス(1884〜1969)は、20世紀ドイツを代表する巨匠ピアニストで、いわばドイツの精神主義を体現化した音楽家でした。青年時代には「鍵盤の獅子王」と呼ばれた絢爛たる技巧を誇示したヴィルトゥオーゾでしたが、年を経るに従って外面的な美しさを捨て去り、晩年には男性的な極みともいうべき武骨さを身上とする演奏家へと変貌を遂げました。

 無類のスケールの大きさと崇高な人間味を併せ持つその演奏は、ドイツ音楽の精髄ともいうべきバッハ、モーツァルト、ハイドン、ベートーヴェン、ブラームスなどのレパートリーにおいて、他に並ぶもののない奥義を極めた演奏を聴かせてくれました。

 バックハウスが、巨匠カール・ベーム(1894〜1981)指揮するウィーン・フィルと、1967年に英DECCAに録音したブラームスのピアノ協奏曲第2番は、発売以来一度たりともカタログから消えたことのない、まさにエヴァーグリン的な名盤と称せましょう。
      

 


生涯三度目のブラームス  
 
 バックハウスは、少年時代に大ピアニストだったダルベールに師事し、ドイツ音楽の伝統(特にベートーヴェン解釈)を伝授されました。録音にも早くから積極的で、すでに旧吹込み時代の1908年には録音を開始し、電気録音時代にはEMIにかなりの録音を行っています。第2次大戦後は英DECCAに移籍し、モノラル〜ステレオを通じてその晩年の至芸をDECCAならではの鮮明で立体的なサウンドで録音し続けました。

 ブラームスの第2番は、バックハウスが最も得意とした協奏曲の一つで、SP時代の1939年にベーム/シュターツカペレ・ドレスデンと、モノラル時代の1952年にシューリヒト/ウィーン・フィルとセッション録音を行なっており、1967年のベーム/ウィーン・フィルとのステレオ録音は3度目の録音となったものです。

 バックハウス+ベーム+ウィーン・フィルという組み合わせは当時ヨーロッパにおける最大の聴きものとされ、この録音からも、お互いを、そして作品を知り尽くしたことから生まれる融通無碍の境地が窺い知れます。作品に込められた渋い情熱の火照り、諦観、そして晩年のブラームスとしては意外なほどに明るく軽やかな足取りなどを、ごく自然体のうちに明らかにしていく名演です。  
  


最高の状態でのSuper Audio CDハイブリッド化が実現    
 
 プロデュースは、DECCAでブリテンやケルテスの録音を担当したレイ・ミンシャルで、エンジニアのマイク・マイルズとのコンビで収録に当たりました。1956年以来1980年代にいたるまで、デッカのウィーンにおけるステレオ・セッションのホームグラウンドとなったゾフィエンザールは、19世紀前半に浴場として建てられ、その後舞踏会場として使われていた建物で、ヨハン・シュトラウスも頻繁に舞台に立ちました。

 このホールは、細部の音まで明晰に収録・再現しようとするデッカのレコーディング・ポリシーに最適で、伝説的なショルティの《ニーベルングの指環》をはじめとする、デッカ・サウンドの代名詞となった名録音が次々と生み出されました。このブラームスもその1枚で、渋みを持った美しいソロ・ピアノ(ベーゼンドルファー)を中心に、その背景に、シルキーでしかも厚みのある弦楽パート、香ばしい輝きを放つ金管、ウィンナ・オーボエやクラリネットなど個性的な響きを披露する木管などをくっきりと立体的に再現し、録音後、ほぼ半世紀を経た現在も、その鮮明なサウンドの魅力は色あせていません。

 今回のSuper Audio CDハイブリッド化に当たっては、これまでのエソテリック企画同様、使用するマスターの選定から、最終的なDSDマスタリングの行程に至るまで、妥協を排した作業が行われています。特にDSDマスタリングにあたっては、DAコンバーターとルビジウムクロックジェネレーターに、入念に調整されたエソテリック・ブランドの最高級機材を投入、また同社のMEXCELケーブルを惜しげもなく使用することで、貴重な音楽情報を余すところなくディスク化することができました。  



協奏曲ディスク史上に輝く、人類の持つ至宝

 『ドイツ音楽がそのまま音になったような演奏で、この作品を語る上でまず第一にあげられなければならない名演である。80歳を超えた大家が、ベーム/ウィーン・フィルによる極上のバックを得て、堅固に構築された様式感をもって堂々たるピアノをきかせている。しかしここには峻厳さとともに、音楽自体を語りかけてくるものがある。真の円熟からあふれ出る風格に圧倒される思いである。』

(長谷川勝英、『レコード芸術別冊・クラシック・レコード・ブックVOL.3協奏曲編』、1985年)


『出来上がった演奏は豊かな風格を持ち、細部に至るまですべての要素がよく手の内に入っている。押し出しよく、伝統的な要素にも配慮が行き届き、間然とするところがない。まさに当協奏曲の大作の『金看板(盤)』と称してもおかしくないような存在感を持っている。ことトータルな側面で言うなら、この20世紀中ごろを中心に活躍した両大家の演奏は、新しい世紀を迎えた現代になっても、まだその価値を失っていない。』

(吉井亜彦、『クラシック不滅の名盤1000』、2007年)


『この曲をフィジカルに熟知しているウィーン・フィル、その構成感に徹底的に通じたベーム、そしてその両者を身に付けたバックハウスのあいだには一部の隙もなく、しかも融通無碍に呼吸しあい、黄金の三位一体を実現している。五十年もののブランデーの芳醇な味わいそのもの。そのような自然でまろやかな成熟感に富む演奏は、このところとんと聴かれなくなってしまった。』

(喜多尾道冬、『レコード芸術別冊・名曲大全 協奏曲編』、1998年)


『これは、ピアニスト、指揮者、オーケストラと三拍子そろい、そのいずれもが超弩級という、協奏曲ディスク史上に輝く、人類の持つ至宝といえよう。ここにはもはや演奏者の存在も作曲者の存在もなく、最高に精神的な一つの音楽だけが圧倒的な感動を伴って迫ってくるのだ。』

(宇野功芳、『レコード芸術別冊・演奏家別クラシック・レコード・ブックVOL.2器楽奏者編』)


 

 



■収録曲

ヨハネス・ブラームス
ピアノ協奏曲第2番変ロ長調作品83

1: 第1楽章: アレグロ・ノン・トロッポ
2: 第2楽章: アレグロ・アパッショナート
3: 第3楽章: アンダンテ
4: 第4楽章: アレグレット・グラツィオーソ

演奏
ヴィルヘルム・バックハウス(ピアノ)
エマヌエル・ブラベッツ(チェロ)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:カール・ベーム

[録音]
1967年4月、ウィーン、ゾフィエンザール

[日本盤LP初出]
SLC-1628(1967年11月)

[オリジナル/プロデューサー] レイ・ミンシャル

[オリジナル/レコーディング・エンジニア]
マイク・マイルズ

[SACDプロデューサー]
大間知基彰(エソテリック株式会社)

[SACDリマスタリング・エンジニア]
杉本一家
(ビクタークリエイティブメディア株式会社 マスタリングセンター)

[SACDオーサリング]
藤田厚夫(有限会社エフ)

[解説]
諸石幸生 門馬直美

[企画協力]
東京電化株式会社

[企画/販売]
エソテリック株式会社