SACD ハイブリッド

アナログ時代の最高の名演、
気品あるフルニエのドヴォルザーク。
理想的なマスタリングを経て鮮烈によみがえる。

 

ドヴォルザーク:チェロ協奏曲
ピエール・フルニエ(チェロ)
ジョージ・セル(指揮)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

ベートーヴェン:チェロ・ソナタ第3番
ピエール・フルニエ(チェロ)、
フリードリヒ・グルダ(ピアノ)



価格:3,300円(税込)
ESSG-90087[SACD Hybrid]
DSD MASTERING
Super Audio CD層:2チャンネル・ステレオ[マルチなし]
美麗豪華・紙製デジパック・パッケージ使用


SOLD OUT!


高貴な音色としなやかな響き〜「チェロのプリンス」ピエール・フルニエ

   20世紀フランスを代表するチェリスト、ピエール・フルニエ(1906.6.24-1986.1.8)は、
その高貴で美しい音色、エレガントで格調高い音楽性ゆえに「チェロのプリンス」と称された名手です。

 1940年代のSP時代から録音にも熱心に取り組み、1940年代のEMI、1950年代のデッカを経て、1959年から1971年にかけてはドイツ・グラモフォン(およびアルヒーフ)の看板チェリストとして、バッハからストラヴィンスキーに至る幅広いレパートリー(CDにして約18枚)を録音しています。

 ちょうど、フルニエが50代半ばから60代前半にかけての時期にあたり、チェリストとして
心技ともに最も充実した演奏の数々が刻み込まれています。
      

 


ステレオLP時代の定番、ドヴォルザークのチェロ協奏曲  
 
 当アルバムのドヴォルザークのチェロ協奏曲は、そのフルニエのDG時代の録音の中でも殊更評価が高く、ステレオLP時代を通じて、ロストロポーヴィチ/カラヤン盤(DG)と並び最高の名演とされていた1961年録音の歴史的名盤です(フランスADFディスク大賞、ドイツ・レコード批評家賞受賞)。

 この協奏曲は、フルニエにとって愛奏曲の一つであり、この録音以前にEMIへのSP、デッカへのモノラルと正規セッション録音だけでも2種類の録音を残していますが、あらゆる意味でこの3度目のステレオ録音が、比較を絶した境地の名演といえるでしょう。

 土臭さ満載のこの協奏曲から、これほどまでに温かくノーブルで、しかも繊細な響きを引き出しているのは、まさにフルニエならではの至芸といえるでしょう。



セル+ベルリン・フィル唯一の貴重なセッション録音    
 
 このドヴォルザークでフルニエのソロを盛りたてているのが、巨匠ジョージ・セル(1897.6.7 - 1970.7.30)指揮するベルリン・フィル。

 1946年〜70年まで音楽監督をつとめたクリーヴランド管弦楽団を20世紀後半で最も精緻なアンサンブルを誇る名オーケストラに鍛え上げたことで知られるハンガリー出身の名指揮者ですが、ベルリン・フィルとのセッション録音は、何とこのドヴォルザークのみです(ドイツ・グラモフォンへの唯一の録音でもあります)。

 オーケストラの音価やバランスを精密にコントロールすることで、各パートがこれ以上なく明晰に、しかも立体的に響き、前進するエネルギーに満ちた推進力を備え、カラヤン時代のベルリン・フィルが、まるでクリーヴランド管を思わせる筋肉質な響きに変貌するさまは、まさにセルならではの指揮です。


グルダとのベートーヴェンの名演    
 
 ドヴォルザークとカップリングされているベートーヴェンのチェロ・ソナタ第3番は、ウィーン出身の個性派ピアニスト、フリードリヒ・グルダ(1930.5.16 - 2000.1.27)との共演で1959年に録音された全集から取られた演奏です。

 この全集はフルニエにとって、DGへのデビュー録音となったもので、SP時代のシュナーベルとの全集に続く2度目のベートーヴェン全集となりました(フルニエはこの後1965年にケンプと3度目の全集をライヴで録音しています)。

 グルダの冴えわたったピアノに支えられて、フルニエのチェロが陰影に富んだ音楽を繰り広げています。フルニエの室内楽奏者としての卓越した手腕を堪能することができる名演です。



最高の状態でのSuper Audio CDハイブリッド化が実現    
 
 ドヴォルザークの録音は、ベルリン郊外のダーレム地区にあるイエス・キリスト教会で行なわれました。1950年代初頭から1972年までベルリン・フィルの録音がほぼ独占的に行なわれていたこの教会は、深みのある豊かな響きが特徴ですが、アナログ時代のDGの名エンジニア、ギュンター・ヘルマンスは、その中でチェロ独奏を美しく明晰に際立たせつつ、その背後に大きく広がるオーケストラのソノリティを余すところなく録音に収めています。

 ベートーヴェンのチェロ・ソナタは、これまた美しい残響で知られるウィーンのムジークフェラインザールで収録されていますが、ここでは室内楽にふさわしく、チェロとピアノというそれぞれの楽器のプレゼンスをしっかりと感じさせる音作りがなされています。

 今回のSuper Audio CDハイブリッド化に当たっては、これまでのエソテリック企画同様、使用するマスターの選定から、最終的なDSDマスタリングの行程に至るまで、妥協を排した作業が行われています。

 特にDSDマスタリングにあたっては、DAコンバーターとルビジウムクロックジェネレーターに、入念に調整されたエソテリック・ブランドの最高級機材を投入、また同社のMEXCELケーブルを惜しげもなく使用することで、貴重な音楽情報を余すところなくディスク化することができました。


「ドヴォルザークがこの協奏曲にこめた思いや郷愁をしなやかな確信をもって歌いつくしている」

◎ドヴォルザーク:チェロ協奏曲
『フルニエは、いかにもフランス人らしい高貴でエレガントな芸風を持ち味にした得難い名チェリストであったが、このアルバムは彼のそうした至芸を伝える最高の記録である。

セル指揮のベルリン・フィルをバックに得たドヴォルザークはフルニエのまろやかで上品な表現とセルのあたたかくも引き締まった音楽づくりが見事な調和を実現させている演奏であり、この名作の数ある録音の中でももっとも上品で格調の高い名演になっている。』
(柴田龍一、『レコード芸術別冊・クラシック不滅の名盤 - 究極の100タイトル』)


『チェロのプリンスといわれたフルニエらしく、いかにも品格高く美しい演奏である。フルニエは当時50歳半ばという脂の乗り切った時期にあっただけに、艶やかに磨かれた音と肌目細やかな抒情味にとんだ表現が何とも美しく、技巧的にも間然とするところがない。

しかも、極めて優美で端正な演奏は決してひ弱になったり、過度な感傷に溺れることがなく、アメリカ滞在中のドヴォルザークがこの協奏曲にこめた思いや郷愁をしなやかな確信をもって歌いつくしている。セルがベルリン・フィルから細部まで見事に整った演奏を引き出しており、美しく引き締まった表現はフルニエのチェロに劣らず格調が高く、スケールや剛毅さにも不足しない。』
(歌崎和彦、『レコード芸術別冊・クラシック不滅の名盤1000』、2007年)


◎ベートーヴェン:チェロ・ソナタ
『フルニエは1950年代から60年代前半にかけてが彼の演奏家としてのひとつのピークであったといえよう。グルダとのベートーヴェンにおいても、フルニエは伸びやかに感興豊かな演奏を展開している。
グルダのみずみずしいピアノとの呼吸もよく合い、それに触発されたかのようなフルニエのしなやかな気品をたたえた表現が素晴らしく、フルニエ特有の美音と溌剌とした生気もまたこの両者の出会いならではの魅力である。』
(浅里公三、『レコード芸術別冊・クラシック・レコード・ブックVOL.3室内楽曲編』、1985年)


『この録音の前後にしばしばフルニエと共演したグルダは、当時を回想し、フルニエと「あらゆる点で指導者」といい「非常に多くのことを学んだ」と語っているが、フルニエもグルダのいきいきとしたピアノに触発されたかのような感興豊かな演奏を展開しており、呼吸もぴったりと合っている。翌年のバッハの無伴奏チェロ組曲とともにフルニエの芸術の頂点を占める名演と言えよう。』
(浅里公三、『レコード芸術別冊・名曲大全 室内楽曲編』、1998年)

 


■収録曲

アントニン・ドヴォルザーク
チェロ協奏曲ロ短調作品104

1. 第1楽章 アレグロ
2. 第2楽章 アダージョ・マ・ノン・トロッポ
3. 第3楽章 フィナーレ:アレグロ・モデラート

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
チェロ・ソナタ第3番イ長調作品69

4. 第1楽章 アレグロ・マ・ノン・タント
5. 第2楽章 スケルツォ・アレグロ・モルト
6. 第3楽章 アダージョ・カンタービレーアレグロ・ヴィヴァーチェ

[演奏]

[ドヴォルザーク]
ピエール・フルニエ(チェロ)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮: ジョージ・セル

[ベートーヴェン]
ピエール・フルニエ(チェロ)
フリードリヒ・グルダ(ピアノ)


[録音]
1961年6月1日〜3日、ベルリン、イエス・キリスト教会(ドヴォルザーク)、
1959年6月17日〜28日、ウィーン、ムジークフェラインザール(ベートーヴェン)

[日本盤LP初出]
SLGM1084 (1961年11月/ドヴォルザーク)、
SLGM 27 (1960年10月/ベートーヴェン)

[オリジナル/プロデューサー] Prof.エルザ・シラー

[オリジナル/ディレクター] ハンス・ウェーバー(ドヴォルザーク)、
カール=ハインツ・シュナイダー(ベートーヴェン)

[オリジナル/レコーディング・エンジニア]
ギュンター・ヘルマンス(ドヴォルザーク)、
ハインツ・ヴィルトハーゲン(ベートーヴェン)

[Super Audio CDプロデューサー] 大間知基彰(エソテリック株式会社)

[Super Audio CDリマスタリング・エンジニア] 杉本一家
(ビクタークリエイティブメディア株式会社、マスタリングセンター)

[Super Audio CDオーサリング] 藤田厚夫(有限会社エフ)

[解説] 諸石幸生 渡辺 護 長谷川勝英

[企画/販売] エソテリック株式会社

[企画/協力] 東京電化株式会社