SACD ハイブリッド

グリュミオーとデイヴィス
〜類まれなモーツァルティアンの邂逅が生んだ、
モーツァルトの理想像。
 
 

モーツァルト:
ヴァイオリン協奏曲第3番/
第5番《トルコ風》/協奏交響曲
アルトゥール・グリュミオー(ヴァイオリン)
サー・コリン・デイヴィス(指揮)
ロンドン交響楽団


価格:3,143円(税別)
ESSD-90108[SACD Hybrid]
DSD MASTERING
Super Audio CD層:2チャンネル・ステレオ[マルチなし]
美麗豪華・紙製デジパック・パッケージ使用


SOLD OUT!


甘美で美しい音色はまさに洗練美の極致

   フランコ・ベルギー楽派の伝統を20世紀に継承した名ヴァイオリニスト、アルテュール・グリュミオー(1921.3.21-1986.10.16)。

 その甘美で艶を帯びた美しい音色は、まさに優美そのもの、洗練美の極致であり、ヴァイオリンという楽器の一つのイメージを体現させ定着させたヴァイオリニストでした。

 楽譜に書かれたことを、ルバートやポルタメントなどの誇張なしにきっちりと再現しつつも、決して即物的にならず、節度をもったロマンティシズムを湛えたグリュミオーのヴァイオリンは、バッハからストラヴィンスキーにいたる幅広いレパートリーにおいて作品の本質をしっかりと見据えた解釈を可能にし、20世紀のヴァイオリン演奏史に大きな足跡を残しています。


 

新興フィリップス・レーベルの看板アーティスト  
 
 ブリュッセル音楽院でアルフレッド・デュボアに学び、さらにパリでジョルジュ・エネスコに師事したグリュミオーは、1939年にアンリ・ヴィュータン賞、フランソワ・ブリュム賞を受賞し、さらに翌1940年にはベルギー政府からヴィルチュオジテ賞を授与されました。

 戦後間もなくパリでモーツァルトのヴァイオリン協奏曲第3番を弾いてパリ・デビューを飾り「ティボーの再来」と称えられ、フランスを演奏活動の拠点に置きつつ、1949年には母校の教授にも就任しました。その頃から英EMIなどにレコーディングを開始したグリュミオーでしたが、何といってもその個性あふれる演奏が注目されるようになったのは1953年に始まるオランダのフィリップス・レーベルへの一連の録音でした。

 折しも78回転SP盤に代わるLPという新しい再生メディアの黎明期であり、録音再生技術の向上とともにより鮮明な再生音を家庭で手軽に味わうことが出来るようになった時代。

 グリュミオーの洗練された演奏は、繊細な音色までをも細かく収録することのできるこの新しいメディアの、そして戦後の新興レコード会社の一つ、フィリップス・レーベルの象徴ともなったのです。

 1953年に開始されたグリュミオーのフィリップスへの録音は、彼がなくなる3年前の1983年まで約30年間にわたって継続され、協奏曲・室内楽・ソナタ・小品・無伴奏作品に至る、ヴァイオリンの主要なレパートリーを網羅することになりました。




グリュミオーの十八番を世界初 Super Audio CDハイブリッド化     
 
 モーツァルトのヴァイオリン協奏曲は、第3番がパリ・デビューおよび1953年のフィリップスへの初録音に選ばれたことからもわかるように、グリュミオーの十八番でした。

 グリュミオーは1953年から55年にかけて、現在では偽作として知られる第7番を含むモーツァルトのヴァイオリン協奏曲全曲録音を、ルドルフ・モラルトおよびベルンハルト・パウムガルトナー指揮ウィーン交響楽団との共演によってモノラルで完成させ、さらにステレオ技術の到来によって、1961年から64年にかけて、今度は第7番の代わりに協奏交響曲を加えた協奏曲全曲をコリン・デイヴィス指揮ロンドン交響楽団と再録音しています。

 今回世界で初めて(※2014年11月現在)Super Audio CDハイブリッド化される3曲は、
この2度目の全集からのセレクションであり、発売後カタログから消えることなく今に至るまで聴き継がれているエヴァーグリーンの名盤です。



明晰かつ優美な音楽解釈は、20世紀中葉のモーツァルト像を具現化     
 
グリュミオーのヴァイオリンの洗練された美しい音色、端正で清潔なフレージング、伸びやかな歌心は、まさにモーツァルト作品の演奏に最適といえましょう。

 第3番では師イザイのカデンツァを選んでいるのも聴きものです。 そのグリュミオーをバックアップするのが、やはりモーツァルティアンとして名を馳せたイギリスの名指揮者サー・コリン・デイヴィス(1927.9.25 - 2013.4.14)指揮するロンドン交響楽団の緻密なバックアップ。

 1960年代といえば、デイヴィスがロンドンを中心に頭角を現し始めた時期であり、グリュミオーのソロともども、明晰かつ優美な音楽解釈は、20世紀中葉のモーツァルト像を具現化したもの。グリュミオーとデイヴィスの息の合った共演ぶりは、この後も1970年代にベートーヴェンとブラームスの協奏曲のレコーディングで実現することになります。

 1960年代は40代に入ったグリュミオーが脂の乗った活動ぶりを見せた時期であり、このモーツァルトと並行して、バッハのヴァイオリン協奏曲、無伴奏ソナタとパルティータ、ヴァイオリン・ソナタ集、メンデルスゾーン、ブルッフ、チャイコフスキー、ヴュータン(第5番)、サン=サーンス(第3番)、ラロなどのヴァイオリン協奏曲、フランク、ドビュッシー、ラヴェル、フォーレなどのヴァイオリン・ソナタなど、重要なレパートリーのレコーディングを続々と行なっていることからもその充実ぶりがうかがえます。

 比較的オーケストラに近接したバランスで収録されており、厚みのあるオーケストラを背景にヴァイオリン・ソロがくっきりと浮かび上がります。

 今回のSuper Audio CDハイブリッド化に当たっては、これまでのエソテリック企画同様、使用するマスターの選定から、最終的なDSDマスタリングの行程に至るまで、妥協を排した作業が行われています。特にDSDマスタリングにあたっては、DAコンバーターとルビジウムクロックジェネレーターに、入念に調整されたエソテリック・ブランドの最高級機材を投入、また同社のMEXCELケーブルを惜しげもなく使用することで、貴重な音楽情報を余すところなくディスク化することができました。



『ここにはモーツァルトを聴く者だけに許された至福がある』

  「グリュミオーの張りのある艶やかな美しい音がまことに魅力的である。その美音を存分に生かしてモーツァルトの美しい旋律を朗々と歌い上げているのだが、細部まで入念な彫琢をほどこした表情はニュアンス豊かで、明快かつ端正さと見事なバランスをとっている。デイヴィスの指揮もすぐれていて、古典的な造形を大切にしながら、息の合ったサポートぶりである。」
(福本健一、『レコード芸術別冊・クラシック・レコード・ブックVOL.3協奏曲編』、1985年)

 
  「40代を迎えいっそう熟した名ヴァイオリニストの至芸を味わうことが出来る。数年前のモノラル盤とこれらを聴き比べると、グリュミオーの演奏ぶりに、あきらかにコクの増していることが実感されよう。第1回の録音も非常な純美さをもって弾き上げられた名盤には違いないが、第2回のそれは全体にいっそう肌理の細かい表現に満ち、音色の用い方、表情の付け方に多彩さが加わっている。

 おびただしく存在するモーツァルト・ヴァイオリン協奏曲のレコーディングの中でも、ステレオ初期のこのグリュミオー盤がしばしばベストに挙げられるのは至当であろう。」
(濱田滋郎、『アルトゥール・グリュミオー・エディション』ライナーノーツ、1994年)


 「気高い気品と知的なたたずまいに心も洗われるグリュミオーの至芸である。数多い名盤の中でもこれほどすがすがしい香りと溌剌とした生命力にあふれた演奏は例がなく、まさに天使の乱舞を思わせる。艶やかな音色、表現のコクとキレ、そしてモーツァルトへの愛情が結晶となった演奏で、ここにはモーツァルトを聴く者だけに許された至福がある。

 官能的でどこか音の媚薬を思わせる陶酔感は何にも代えがたい喜びだし、天性のカンタービレも絶品である。デイヴィスの指揮が古典的様式美を保ちながら躍動的なのも魅力である。」
(諸石幸生、『レコード芸術別冊・クラシック不滅の名盤800』、1997年)


 「愛器ストラディヴァリ《エックス・ゲラン・デュポン》を駆使したフランコ・ベルギー派の名手グリュミオーの美音は、まさにモーツァルトには打ってつけで、この作品群の最高至福の演奏が聴ける。」
(志鳥栄八郎、『レコード芸術別冊・クラシック名盤大全VOL.3協奏曲編』、1998年)




■収録曲

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
ヴァイオリン協奏曲第3番ト長調K.216
[カデンツァ:ウジェーヌ・イザイ]
1. 第1楽章: アレグロ
2. 第2楽章: アダージョ
3. 第3楽章: ロンドー(アレグロ)

ヴァイオリン協奏曲第5番イ長調K.219 《トルコ風》
[カデンツァ:ヨーゼフ・ヨアヒム&アルトゥール・グリュミオー]
4. 第1楽章: アレグロ・アペルト
5. 第2楽章: アダージョ
6. 第3楽章: ロンドー(テンポ・ディ・ミヌエット)

協奏交響曲変ホ長調K.364
7. 第1楽章: アレグロ・マエストーソ
8. 第2楽章: アンダンテ
9. 第3楽章: プレスト


[演奏]
アルトゥール・グリュミオー(ヴァイオリン)
アルゴ・ペリッチャ(ヴィオラ)[K.364]
ロンドン交響楽団
指揮: サー・コリン・デイヴィス


[録音] 1961年11月28日〜29日(K.216、K.219)、
1964年5月15日〜22日(K.364)、
ウォルサムストウ・アッセンブリー・ホール、ロンドン

[初出] 835112AY(K.216, K.219) 835256AY(K.364)

[日本盤初出] SFL-7519 (K.216, K.219)

[1965年7月] SFL-7803 (K,364)[1964年12月]

[オリジナル/プロデューサー/バランス・エンジニア]
K.216 & 219 ヘルムート・クラウエル、 K.364 ヴィットリオ・ネグリ

[Super Audio CDプロデューサー] 大間知基彰(エソテリック株式会社)

[Super Audio CDリマスタリング・エンジニア] 杉本一家
(ビクタークリエイティブメディア株式会社、マスタリングセンター)

[Super Audio CDオーサリング] 藤田厚夫(有限会社エフ)

[解説] 諸石幸男 藤井孝一

[企画/販売] エソテリック株式会社

[企画/協力] 東京電化株式会社