SACD ハイブリッド

ヴァイオリンという楽器の魅力を
とことんまで堪能させてくれる豊潤な音色。
20世紀ヴァイオリン界の最高峰が
その最盛期に残したベートーヴェンの名ソナタ2曲、
初のSuper Audio CD ハイブリッド化が実現。
 
 

ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ
第9番「クロイツェル」 &第5番「春」
 
ダヴィッド・オイストラフ(ヴァイオリン)
レフ・オボーリン(ピアノ)


価格:3,143円(税別)
ESSD-90120[SACD Hybrid]
DSD MASTERING
Super Audio CD層:2チャンネル・ステレオ[マルチなし]
美麗豪華・紙製デジパック・パッケージ使用


SOLD OUT!


20世紀最大のヴァイオリニスト、ダヴィッド・オイストラフ

   20世紀は様々に個性的なヴァイオリニストを生み出しましたが、その中でもヴァイオリンという楽器の豊麗な美しさを最もストレートに聴かせてくれたのは、ソヴィエトのオデッサ出身だったダヴィッド・オイストラフ(1908.9.30〜1974.10.24)でした。

 5歳から生地の名教師ストリヤルスキーに師事しその才能をすくすくと伸ばした天才は、やがて1935年の全ソ音楽コンクールやヴィニャフスキ国際コンクールでの入賞で大きく注目され、さらに1937年のイザイ国際コンクールでの優勝でその名を不動のものとしました。

 盤石とも思える安定した技巧、豊潤な音色、誠実で洗練された語り口、スケールの大きな表現力、格調の高さなど、ヴァイオリニストあるいは音楽家としてのさまざまな要素が一つとして突出することなく、高度な次元で完成していた点に大きな特徴がありました。

 ロシアのヴァイオリン演奏の伝統を継承しながらも、それをユニヴァーサルなものにまで高めることができたのは、ひとえにこの全人的な音楽性の賜物であったといえるでしょう。

 手中にしていたレパートリーも、バロックからショスタコーヴィチやハチャトゥリアンなど同時代の音楽まで網羅し、独奏曲から室内楽・協奏曲まで多岐に及び、1930年代後半から亡くなるまで40年近く続けられたレコーディング活動を通じて後世に残された演奏の量も数多く、いずれの点でも破格の存在でした。
教師としても声望に恵まれ、ギドン・クレーメルらを門下から輩出しています。


 

オイストラフの代表盤  
 
 残された膨大な録音の中からオイストラフの代表盤を選び出すのはほとんど不可能ともいえますが、その中でもまず指を屈するべきは1962年にパリでレコーディングされたベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全集でしょう。

 当アルバムは、その全集から名前付きの名曲2曲、「クロイツェル」と「春」を選んでカップリングしたものです。オイストラフは1962年5月〜6月にかけてパリのサル・プレイエルでベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全曲を演奏しており、この録音もそれを契機にパリで収録されたものと思われます(録音日の詳細は不明ながら、1962年10月の録音とされています)。

 モノラル時代のグリュミオー+ハスキル盤、ステレオ時代のフランチェスカッティ+カザドシュ盤などと並び、これらの作品の最もスタンダードな演奏として長く聴き続かれてきた名演奏です。20世紀中盤の美意識における古典的な様式感が際立ち、作曲者が作品に託した高潔な精神が美しく輝き出る感があり、まさに作品の理想的再現と言えるでしょう。




室内楽の極みともいえる、名手オボーリンとの共演     
 
 そのオイストラフの名演を力強く支えているのが名手レフ・オボーリン
(1907.11.11〜1974.1.5)のピアノです。

 オボーリンは、モスクワ音楽院で学び、名教師イグムノフの薫陶を受け、1927年の第1回ショパン国際ピアノ・コンクールで優勝するなど、20世紀ソ連の生み出した類まれな名ピアニストの一人でした。

 オイストラフとは同世代であり、1935年に初めて演奏会で共演して以来生涯にわたって共演を続けました。1941年にはオイストラフ、チェロのクヌシェヴィツキーと三重奏団を結成して、室内楽の分野でも大きな足跡を残しています。

 オイストラフは、専属伴奏者的存在だったヤンポリスキーのほかにも、ゴリデンウェイゼル、ギンズブルグ、リヒテル、バドゥラ=スコダなど、ソリストとしても強い個性を持っていたピアニストと共演していますが、オイストラフの全人的なバランスの取れた音楽性を最も引き立てつつ、作品の魅力を引き出すことができたのはオボーリンであったといえるのではないでしょうか。

 その意味で、この2人が最も脂の乗った時期に、彼らの中心的なレパートリーでもあったベートーヴェンのソナタが、セッションによるステレオ録音としてきちんとした形で残されたのは何よりの僥倖というべきものでした。



最高の状態でのSuper Audio CDハイブリッド化が実現     
 
 録音場所の詳細やスタッフ名は明らかにはされていませんが、響きの少ないどちらかというとスタジオ風の雰囲気のサウンドで、ヴァイオリンはやや左側に定位し、その奥から右側にかけてピアノが定位するバランスで収録されています。響きが少ないだけに、演奏のニュアンスは一音一音に至るまで明晰で、オイストラフの見事なボウイングによるフレージングの見事さ、オボーリンのサポートぶりの絶妙さが手に取るように聴きとれます。

歴史的な名盤だけにCD発売初期からデジタル・リマスター化されており、その後24ビット・マスタリングで発売されたり、韓国ではXRCD化されたりもしていますが、今回のSuper Audio CDハイブリッド化に当たっては、これまでのエソテリック企画同様、使用するマスターの選定から、最終的なDSDマスタリングの行程に至るまで、妥協を排した作業が行われています。

特にDSDマスタリングにあたっては、DAコンバーターとルビジウムクロックジェネレーターに、入念に調整されたエソテリック・ブランドの最高級機材を投入、また同社のMEXCELケーブルを惜しげもなく使用することで、貴重な音楽情報を余すところなくディスク化することができました。



「この録音こそ20世紀の演奏史を語る上で決して忘れてはならないものの一つ」

  「オイストラフとオボーリンのコンビは、遅いテンポを主体に極めて安定した演奏を繰り広げてゆく。高い音楽性と、落ち着いた風格と、やや沈んだ、ケレン味のない表現が好ましい。両者とも、楽譜に書かれた全ての音をきっちりと弾き、ベートーヴェンの音楽自体に語らせようとしており、心のこもった美しい音色や優秀な音楽性がそれを支える。スケールの大きいシンフォニックな表現だ。」
(『レコード芸術別冊 クラシック・レコード・ブックVol.5 室内楽曲編』、1985年)


 「このコンビによる演奏は、オボーリンのピアノが多少引っ込み気味のため、アピールする力がその分割り引かれてしまった感じがするけれど、風格ある誠実な姿勢で細部に豊かな感情を注入し、かつ全体をゆるぎなく造形していくオイストラフは見事。」
(『クラシック不滅の巨匠たち』、1993年)


 「ソヴィエトを代表する大ヴァイオリニストのオイストラフが、名実ともに世界最高クラスの演奏家であることを確認させたレコード、それがオボーリンとのデュオによるこの録音だった。力強いボーイングから弾き出される、美しいヴィブラートを伴った豊麗で輝かしい音色、洗練の限りを尽くした端正な音楽の語り口には、強靭無類の技巧を、それと感じさせぬ人間味の暖かさがあって、芸術的奥行きの深さが、激しく高揚する魂の燃焼をいちだんと作品そのものの本質に近付ける。
ここでのオイストラフは、まさしく円熟した風格でもって、若いベートーヴェンならではの気概を悠然たるスケールの音楽に結実させる。(・・・)見逃せないのがオボーリンのピアノの安定した表現力である。内面に秘めたロマンティックなファンタジーが、アカデミズムと思えるほどの様式感の上に美しく構築されて、オイストラフの全表現をしっかりと支えるあたり、万全と言える。」
(『ONTOMO MOOK クラシック不滅の名盤800』、1997年)


 「この録音こそ20世紀の演奏史を語る上で決して忘れてはならないものの一つ。オイストラフが長年の盟友であるオボーリンをパートナーに選んでいるところがみそ。
その大らかにヴァイオリンを包み込みながら、しかもきっちりと主張も展開するピアノがこれらの作品においていかに重要な役割を果たしていることか。
このピアノあってこそ、オイストラフは自在にその品格の高い音楽を惜しげもなく展開することが可能になっている。素晴らしいデュオである。」
(『ONTOMO MOOK クラシック不滅の名盤1000』、2007年)


「オイストラフはさまざまなピアニストと共演を行なったが、その個性や持ち味を最も無理なくナチュラルに引き出すことのできたパートナーは、やはりオボーリンであった。
そして、その上で完成度の高いアンサンブルとゆるぎない演奏解釈が打ち出されたこの録音は、まぎれもなくオイストラフの真価が花開いた演奏であり、さらに多くのベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタの録音の中でも、もっとも価値のある名演の一つになっている。
オイストラフの人間味溢れる骨太で雄弁な語り口は格別の説得力を放っており、そこではホットで力強い作品像がしっかりと彫琢されているのである。」
(『クラシック名盤大全 室内楽曲編』、1998年)


「絶頂期の巨人たちの共演。幾度聴いても、そのつど感激を新たにする演奏だった。なかでも「クロイツェル」の推進力は、ここで味わっただけのものをその後まだ耳にしていない。ピアノのオボーリンを含めて絶頂期の巨人たちの共演という意味で二重の価値もある。」 (『クラシック不朽の名盤1000』、1984年)




■収録曲

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
ヴァイオリン・ソナタ 第9番 イ長調 作品47《クロイツェル》

1. 第1楽章: アダージョ・ソステヌート―プレスト

2. 第2楽章: アンダンテ・コン・ヴァリアツィオーニ

3. 第3楽章: フィナーレ(プレスト)


ヴァイオリン・ソナタ 第5番 ヘ長調 作品24《春》

4. 第1楽章: アレグロ

5. 第2楽章: アダージョ・モルト・エスプレッシーヴォ

6. 第3楽章: スケルツォ(アレグロ・モルト)

7. 第4楽章: ロンド(アレグロ・マ・ノン・トロッポ)


[演奏]

ダヴィッド・オイストラフ(ヴァイオリン)

レフ・オボーリン(ピアノ)


[録音]
1962年10月、パリ、ル・シャン・デュ・モンド

[Super Audio CDプロデューサー] 大間知基彰(エソテリック株式会社)

[Super Audio CDリマスタリング・エンジニア] 杉本一家
(ビクタークリエイティブメディア株式会社、マスタリングセンター)

[Super Audio CDオーサリング] 藤田厚夫(有限会社エフ)

[解説] 諸石幸生 大木正興

[企画/販売] エソテリック株式会社

[企画/協力] 東京電化株式会社