最高の状態での
Super Audio CD ハイブリッド化が実現
ジャズのステレオ化は
50年代の後半からですが、
いまだに主流はモノーラルの時代、
ここではモノーラル録音に
若干の利点があると判断し、
最初のコンボ演奏による2作は
モノーラルのオリジナルマスターによる
マスタリングを採用しました。
ジャズ特有の熱気や力強さは
モノーラルにより
一層浮かび上がっていると
確信しています。
ギル・エヴァンスとの
作品においては、
そのオーケストレーションの
微妙で繊細な
テクスチャーを何とかして
リスナーの皆様に
お伝えしようと、ステレオ音場を
正確に伝えながら、
綿密なマスタリングを施しました。
マイルス・デイビスの魅力の1つ、
ミュート・トランペットの音色と
オープン時の音色の
対比にも注目してください。
これらを考慮しながら、
エソテリック特有の丁寧なマスタリング、
製盤作業を行いました。
各ディスクで
録音状況に違いはありますが、
「マスターに残された音、
そのものを再現する」ように
心がけました。
今回のSuper Audio CD
ハイブリッド化に当たっては、
これまで同様、
使用するマスターの選定から、
最終的なDSDマスタリングの
行程に至るまで、
妥協を排した作業が行われています。
特に
DSDマスタリングにあたっては、
DAコンバーターと
ルビジウム・クロック・ジェネレーターに、
入念に調整されたESOTERICの
最高級機材を投入、
またMEXCEL ケーブルを
惜しげもなく使用することで、
貴重な音楽情報を余すところなく
ディスク化することができました。
ROUND ABOUT MIDNIGHT
ESSS-90154
17歳のドラマーがマイルスの60年代を創り上げる
マイルス・スマイルズ 60年代に入り、
マイルスは
またまた新しい
サウンドを模索し始めます。
いくつかのメンバー交代を経て
たどり着いたのが
第2期黄金時代と呼ばれるメンバーでした。
20代のハービー・ハンコック、ロン・カーター、
そしてマイルスをして“天才”と言わしめた
若干17歳のドラマー、トニー・ウィリアムス。
これこそが60年代を席巻した
ジャズ・グループだったのです。
このクインテットによる最初のスタジオ録音は、
結成の翌年65年初頭に行われました(『ESP』)。
その後再びライヴ活動を行い、
日々サウンドが進化・急成長を遂げた
グループの1年後の記録が、
この『マイルス・スマイルズ』です。
レコーディング期間においても
日々変化・進歩するグループの、
そして60年代のジャズを代表する演奏が
ここには収められているのです。
《保守性の中での前衛》それが明確な形でここに!
「(グループ・メンバーが固定化されてから)マイルスは、
それまで以上に音楽の方向性を明確なものにしていく。
フリー・フォームもとり入れながら、ジ
ャズの伝統を発展させていくというスタイルだ。」
(『マイルス・デイビス コンプリート・ディスク・ガイド』)
マイルス・グループが
ひとつの頂点に達したことを示した作品
「ウェイン・ショーターを加えたマイルス・グループが
ひとつの頂点に達したことを示した作品としても、
すこぶる興味深かったアルバムである。
フォームそのものが自然体であり、
リズムとソロの緊張感溢れる連鎖のうえに
成り立っている全体の構築と流れが、
その実際の緊密さやポリフォニックな
完成度の高さにもかかわらず
極めてスムーズで明快なのである。」
(『モダンジャズ百科 '73』)
Super Audio CD ハイブリッドの音質
『マイルス・スマイルズ』は
マイルス・デイビスの60年代収録の中でも
音質的に高い評価を得ていた作品です。
最初に印象に残ったのが、
各音像の密度と充実感。
レンジも十分にとれて安定感がある一方、
若干気になっていたノイズ的な
混濁感が一掃されているのです。
それ故に、アンプのボリュームを
どんどん上げることが出来るのも魅力の1つ。
上げても煩さはなく、迫力のみが加わってきます。
歪み感が抑えられているために
全体の見通しがよく、
ドラムスの細かい変化が楽しめます。
独特とも言える60年代モード・ジャズ的な
ベースとドラムスのリズムが克明に捉えられているため、
音楽へ没入することができる
マスタリングが施されています。
最後に聴こえる、マイルスの
ハスキーを通り越した声も実に鮮明です。
<収録曲>
[録音] 1966年10月24、25日、