本作品は、
ESOTERIC創立30周年と
ソフト制作10周年を記念し、
ESOTERICと、オクタヴィア・レコードが
協同制作したアルバムです。
高音質追求に徹し、
ピアノ録音の頂点を目指しました。
■
エフゲニー・ザラフィアンツ(ピアノ)
1959年、オビ川沿い、
シベリアの主要都市ノヴォシビルスクに
生まれたザラフィアンツは、
ブレジネフ政権に対する反抗もあり、
ソ連体制崩壊までは
国内で活動を強いられていました。
海外でその名が知られたのは1993年、
アメリカ、カリフォルニア州パサデナで行われた
ポゴレリチ国際コンクールで準優勝してから。
すでに30代半ばになっていました。
以降、世界各地で公演活動を行っています。
親日家でもあり、日本での公演も数多くあります。
その繊細な表現は実に音楽的。
一方、その弱音を生かすための
力強い打鍵も魅力の一つとされている
オールラウンドな演奏家です。
レパートリーも幅広く、
スカルラッティ、J.S.バッハから
古典派、ロマン派はもちろん、
スクリャービン、ラフマニノフまでを
カヴァーするほどです。
■ピアノを無理なくたっぷり鳴らす絶妙なタッチを駆使…
ショパンに示された歌心に溢れる入魂の表現!
(ムジカ・ノーヴァ誌 2012年 コンサート評より)
■旋律線をたっぷりと歌い上げ、
音の色遣いや響きの遠近感、
そして速度に至るまで極めてこまやかに設定し、
会場を圧倒的なファンタジーに包み込む…
壮大なスケールで音楽を捉え、
彼自身の客観的でストイックなスタンスは、
作品の崇高さを引き出すのに大いに貢献している。
(音楽の友誌 2012年 コンサート評より)
今回は、昨年2016年に行っていた
公演での主要ピースでもある、
ベートーヴェンのピアノ・ソナタと
ショパンのスケルツォ、バラードが
ラインアップされていて、
これはまさに彼としても
ここ数年の音楽的集大成ともいえる作品です。
■最高の状態を創り出しての録音が実現 。
当プロデューサー、
大間知基彰の制作上の志向、
「一切の妥協を排する!」
この方針の下、
マスター・テープからのリマスター同様、
今回の新録音でも、
出来うる限り難条件をクリアして、
スタッフはレコーディングに臨みました。
レコーディング・アーティストが決まった後、
録音会場の選定に。
残響がきれいで、フラッター・エコーがなく、
木の質感が音楽の魅力を一層引き出す、
東京都稲城市「iプラザ・ホール」が選ばれました。
ホールには常設のスタインウェイ、
コンサート・グランドD-274がありますが、
より良いピアノを求め、
クリスティアン・ツィンマーマン氏が
ドイツでセレクトした同社同モデル
(2000年代初期に製造された
同社150周年記念モデルNo.562364)を
特別に取り寄せました。
レコーディング・エンジニアは、
オクタヴィア・レコードの江崎友淑氏。
マイク・ケーブルの選定から、
各種機材のカスタマイズまで、
高音質録音におけるオーディオ的な感性は、
ESOTERICとも共通点が多く、
今回最高の音質を提供してくれました。
江崎氏は、レコーディングで常駐していただいた
ピアノ調律師、足立脩氏と
終始話し合いを持ちながら、
鍵盤のタッチを調整し、
ザラフィアンツの指先から
最上のサウンドを引き出すことに
成功しています。
■2つの異なるマイク・セッティングによる
拘りのDSD録音(Super Audio CD層、ショパン2曲) 。
収録は、
2つの異なるマイク・セッティングで行われました。
一つはオン・マイク・セッティングです。
これはザラフィアンツの優れた美点とされる繊細さ、
そしてその対極に存在する圧倒的な力強さという、
2つの表現の間に生じる驚異的な
ダイナミズムを直接体験していただこうという
趣旨でセットされたものです。
彼の指から鍵盤を伝わり、
それがアクションを通して弦を叩き出す
そのリアリティを実感していただこうというもので、
ピアノの近くにマイクをセッティングし、
ありのままのサウンドを収録しています。
もう一つはオフ・マイク・セッティングです。
ピアノからはやや離れた位置にマイクを置き、
客席にもセットしたホールの
アンビエンスを取り込むマイクともども、
コンサート・バランスをねらったセッティングです。
この2つのパターンで収録したサウンドを、
Super Audio CD層に収録しました。
同質のクオリティによる
2つの異なるサウンドをお楽しみください。
収録にあたっては、
ステージの床からマイク・ケーブルに伝わる
振動を隔絶するための音響対策、
マイク・アンプへの特製インシュレーターの設置、
コンバーター関係の音響対策、
ケーブル類など、今までのディスク制作と
同質の詳細な処理を行っています。
■収録曲について 。
■ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第14番
嬰ハ短調《月光》作品27-2
1801年、独自性と発揮した
創作活動を行いはじめた、その初期の作品です。
楽章ごとにテンポの早さは増し、
有名な第1楽章から第2楽章までは、
終楽章への序奏とも考えられ、
情熱、感情の激流を示す第3楽章へ向けての緊張感、
昂揚をザラフィアンツがどのように演出するか、
またそれをサウンドがどのように捉えているか、
チェックポイントは多岐にわたります。
■ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第26番
変ホ長調《告別》作品81a
交響曲第5番《運命》、
同第6番《田園》を書き終え、
交響曲第7番が完成する間の1810年、
ベートーヴェンにとって40歳を迎える
時期に作られたピアノ・ソナタです。
30代の血気盛んな所謂「傑作の森」と賞された
数々の名作を生んだ時期を過ぎ、
円熟の境地に達しようとする頃の作品で、
より一層の複雑な音楽構造にも注目がいく作品です。
第1楽章冒頭の主題音型3音が
各楽章に顔を出しますが、
この音型のニュアンスの変化を
ザラフィアンツがどう解釈し、
どういう演奏を展開するか、
ここが聴きどころとなります。
■ショパン:バラード 第1番
ト短調 作品23
物語風の音楽表現といわれているバラードですが、
ショパンはここで自らの資質を存分に発揮します。
さまざまな楽章を自由に配しながら
リート、ソナタ、ロンド、変奏曲といった
種々の要素を集約した音楽空間を展開し、
ピアノ作品の一大頂点を創り上げました。
これはピアニストの実力が
あらゆる面で試される作品でもあります。
ザラフィアンツの素晴らしい力量、
それを余すことなく捉えたサウンドを
満喫していただきたい仕上がりです。
■ショパン:スケルツォ 第1番
作品20,第2番作品31
本来は「冗談」を意味する言葉“スケルツォ”に
ショパンは独自の形式を生み出すことで、
極めて深刻な内容を盛り込んでしまいました。
楽曲の意味する、本来の楽しさと、
ショパンの意図、
その相反するイメージの異なった表現…、
ユーモア、いたずらっぽさを超えて漂う悲しさ、
寂しさを奏でる表情を音から味わってください。
■収録曲
[録音]
2017年1月24, 25日
東京・稲城市 iプラザ・ホール
[プロデューサー] 大間知基彰
(エソテリック株式会社)
[エンジニア] 江崎友淑
(株式会社オクタヴィア・レコード)
[調律] 足立脩
[解説] 野沢龍介
[企画・販売]
エソテリック株式会社