SACD ハイブリッド

作品の本質に鋭く切り込む

チョン・キョンファ

全盛期の凄まじいヴァイオリン。

鮮明なデッカ・ サウンドの

最も理想的な形での世界初ハイブリッド化が実現。   

 
シベリウス:ヴァイオリン協奏曲、

ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲

ラヴェル:ツィガーヌ、サン=サーンス:

序奏とロンド・カプリチオーソ

チョン・キョンファ(ヴァイオリン)

プレヴィン(指揮)ロンドン交響楽団、ケンぺ(指揮))

ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団ほか

価格:3,972円(税込)
ESSD-90180[SACD Hybrid]
DSD MASTERING
Super Audio CD層:2チャンネル・ステレオ[マルチなし]
美麗豪華・紙製デジパック・パッケージ使用

SOLD OUT!

※使用したジャケット写真には、

「TCHAIKOVSKY」の文字がありますが、

チャイコフスキーの楽曲は収録していません。

これは、

チョン・キョンハのLP3枚の中から、

セレクトした盤のためです。



■類稀なる名手チョン・キョンファ   

 

チョン・キョンファは

韓国ソウルに生まれ、

12 歳で渡米、ジュリアード音楽院で

名教師ガラミアンに師事してその才能を開花させました。



1967年、19 歳の時に

レーヴェントリット・コンクールでズーカーマンと

第1位を分け合ったことで大きな話題を集め、

その3 年後、1970 年にアンドレ・プレヴィン指揮

ロンドン交響楽団と共演してヨーロッパ・デビューを果たし、

「ジネット・ヌヴー以来、最も素晴らしいヴァイオリ ニスト」と絶賛され、

センセーションを巻き起こしました。



同時に英デッカと録音契約を結び、

ヨーロッ パ・デビューと同じプレヴィン指揮ロンドン響と

チャイコフスキーとシベリウスのヴァイオリン協奏曲を

録音してレコード・デビューを果たしています。



それ以来1987 年まで17 年間にわたって

デッカ・レーベル に室内楽を含む17 枚のディスクを録音。

その後EMIに移籍し、

さらに

2005〜2010 年まで指の故障で

長期療養した後に復帰。

2016 年はバッハの無伴奏全曲を録音し、

コンサートでも披露するなど、

息の長い演奏活動を続けています。

その長い芸歴の中で、

自らの芸風も変化させてきた

チョン・キョンファ ですが、

彼女の名をまず世界に知らしめ、

その芸術の神髄を記録しているのは、

やはり1980 年代初頭 までの録音といえるでしょう。  





1970 年代のチョン・キョンファの神髄     

 

当ディスクは、

1970 年代にアナログ録音された

3 枚のLPからチョンの代表的名演を

当シリーズのために独自に選曲したものです。



シベリウスは上述の1970 年録音の

デッカへのデビュー盤となったもので、

チャイコフスキーとのカップリングで発売されたもの。

ブルッフは同じスコットランド幻想曲との

組み合わせで発売されたチョン2 枚目の録音。



サン=サーンスとラヴェルは、

1977 年に録音された7枚目のソロ・ アルバムにして、

それまで協奏曲の大曲ばかり録音してきていた

チョンにとって初めての小品集となった

LPから採られたものです。



この時期のチョンの演奏の特徴は、

何と言っても作品に憑依したかのような

凄まじい求心力を持っていることでしょう。



体当たり的ともいえる情熱、

豊かな感情の起伏、切れ味の 鋭い技巧、

そして鮮烈なまでの音色など、

ヴァイオリンという楽器を極め、

さらにそれを超えたところで

音楽の深さを垣間見せてくれる

ヴァイオリニストとしてのチョンの本質が

音として刻み込まれています。



シベリウスは清冽かつ純粋な

この音楽の本質を突いた名演ですし、

ブルッフでは作品に盛り込まれた

深いロマンティシズムをごく自然に引き出しています。



サン=サーンスと

ラヴェルはヴィルトゥオーゾとしての

チョンの凄さが最も直接的に味わえるもので、

音楽の変化に沿って千変万化する

その音色の多彩さを聴くだけでも、

彼女の才能の一端に触れられましょう。

 

 





華麗な共演者のラインナップ      

 

共演者の充実ぶりも特筆すべきもので、

シベリウスでは、

当時イギリスで爆発的な人気を誇っていた

アンドレ・プレヴィンと

ロンドン交響楽団が十全にバックアップ。

合わせもの巧者としての

プレヴィンの上手さが発揮されています。

この後EMIがメイン・レーベルとなる

この コンビの初のデッカ録音でもありました。



ブルッフでは、

ロイヤル・フィルおよび

BBC響の首席指揮者を歴任して

イギリス 楽壇でも大御所的な地位にあった

ルドルフ・ケンペの指揮が聴きものです。

そして小品では、これまた合わせもの上手で、

一時期チョンとも親密な関係にあった

シャルル・デュトワが起用されています。

 

 

 



最高の状態でのSuper Audio CD ハイブリッド化が実現      

 

録音は全て1912 年に建立された

ロンドンのキングスウェイ・ホールで行われました。

SP の電気録音最 初期の1926 年から

デジタル録音が始まっていた1984 年まで、

オーケストラ、合唱、

そしてオペラ作品 の録音に引っ張りだこだった、

ロンドンのもっとも有名な録音会場であり、

その深みのある優れたアコースティックは

数多くの名録音を生み出しています。



ヴェテラン・プロデューサーである

クリストファー・ レーバーンと

レイ・ミンシャルがプロデュースを担い、

ホールの音響特性を知り尽くした

デッカのチーフ・エンジニア、

ケネス・ウィルキンソンと

ジェイムズ・ロックがエンジニアリングを担い、

ヴァイオリン独奏 を細部まで明晰に捉えつつ、

後ろに広がるオーケストラの

スケールの大きなサウンド・イメージが巧みに再現されています。



歴史的な名録音だけに、

CD 時代初期からリマスターされ、

一部は「栄光のロン ドン・サウンド」による

24bit/96kHz リマスターやシングルレイヤーの

Super Audio CD としても発売され てきましたが、

今回のSuper Audio CD ハイブリッド化に当たっては、

これまで同様、使用するマスター テープの選定から、

最終的なDSD マスタリングの行程に至るまで、

妥協を排した作業が行われています。



特にDSD マスタリングにあたっては、

DA コンバーターとルビジウムクロックジェネレーターに、

入念 に調整されたESOTERIC の最高級機材を投入、

またMEXCEL ケーブルを惜しげもなく使用することで、

オリジナル・マスターの持つ情報をすところなく

ディスク化することができました。

 

 




『芸術の女神に身を捧げるような弾き方に胸がときめいてくる』      

 

◎シベリウス 「特にシベリウスはすばらしい。

繊細を極めた音色、すばらしいリズム感、豊かな感情、各所に閃くセンス、

実に心をそそる演奏である。プレヴィンのバックも

すっきりとした新鮮さを純粋な音楽性で包んで いる。」

(『レコード芸術』1971 年4 月号、推薦盤)



「1970 年のロンドン・デビューで

センセーションを巻き起こした直後にレコーディングした

チョン・キョン ファのデビュー盤である。

燃え立つような激しい情熱の全てをぶつけたようなヴァイオリンで、

新鮮で強 烈な衝撃を与えたレコード。

厳しいほどの緊張感が全曲に漲り、

並々ならぬ意欲のほどがうかがわれ、

楽器がまるで体の一部であるかのような、

確固たる自信に溢れた演奏でもある。

この逸材の実力を十 二分に発揮させた

プレヴィンの指揮も高く評価されよう。」

(長谷川武久、『レコード芸術別冊 クラシッ ク・レコード・ブック 協奏曲編』、1986 年)



 「高い緊張感を保ちながら厳しい姿勢で

シベリウスの孤高の旋律を歌いあげている。

プレヴィンの指揮は響きの美しさと格調高い表現が際立つとともに、

チョンのソロを絶妙の呼吸で支えている。」

(岡本 稔、『クラシック不滅の名盤800』、1997 年)



「このコンチェルトの清冽さ、純潔な厳しさ、凛としてデリケートなニュアンスを、

チョンぐらい見事に表 出した例はない。

彼女は音楽と完全に一体になっている。

他にも名盤は多いが、それらは曲とは離れた名技、名表現というのがほとんどだ。

ところがチョンの場合は、いったいどこまでは作品の魅力で、

どこまでがヴァイオリニストの魅力なのかがはっきりしない。

彼女をほめればそれがそのまま曲への賛辞 になってしまうのである。」

(宇野功芳、『ONTOMO MOOK クラシック名盤大全・器楽曲編』、1998 年)



 ◎ブルッフ 「チョン・キョンファの演奏は、

感受性に充ちた、楚々として心を添える音と表現を持ち、

冒頭からして 惹かれるが、気持ちをいっぱいに込めてクレッシェンドされると、

身体ごと曲に没入し、芸術の女神に

身を捧げるような弾き方に胸がときめいてくる。

老朽ケンペは、いかにも味の濃い、スケールの大きい、

充実しきった指揮ぶりでチョン・キョンファを包んでいる。」

(『レコード芸術』1973 年4 月号、推薦盤)



 「まだ二十代前半の若さでありながら、

完全に成熟した音楽を聴かせていたチョン・キョンファの

初期のスタイルを伝えているものの一つで、

作品の性格から行っても強烈な個性を表面化させたものではないが、

ケンペ=ロイヤル・フィルとの均衡のとれた美しさが魅力だ。」

(藤田由之、『クラシック不滅の名 盤800』、1997 年)



◎ラヴェル、サン=サーンス

「近年の彼女は、このレコードに明らかなごとく、

表現の幅が広くなってきた。これは大きな進歩である。

サン=サーンスとラヴェルは、明快でのびのびしていて、

いかにも快い。ヴァイオリンをリズミカルに歌わせる点で、

抜群の才能に恵まれている。」

(『レコード芸術』1979 年12 月号、推薦盤)



 「(ツィガーヌは)

ラッサンの第1 部の絞り出すようなG線の音に、

チョンの心の声が聴かれる。

それは 胸をかきむしるようなすごい音色で、

ジプシーの哀愁以上のものが漂う。

フリスカではすべての表現が 天才の証であり、

リズムの間や巧みな節回しが唖然とするほどものを言っている。」

(宇野功芳、『レコー ド芸術別冊 クラシック・レコード・ブック 協奏曲編』、1986 年)

 

 



■収録曲

 

ジャン・シベリウス

ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 作品47

 [1] 第1 楽章 アレグロ・モデラート

 [2] 第2 楽章 アダージョ・ディ・モルト

 [3] 第3 楽章 アレグロ・ノン・トロッポ



マックス・ブルッフ

ヴァイオリン協奏曲 第1 番 ト短調 作品26

 [4] 第1 楽章 前奏曲 アレグロ・モデラート

 [5] 第2 楽章 アダージョ

[6] 第3 楽章 フィナーレ、アレグロ・エネルジコ



モーリス・ラヴェル

 [7] ツィガーヌ



カミーユ・サン=サーンス

[8] 序奏とロンド・カプリチオーソ作品28

 *チャイコフスキーの楽曲は収録しておりません。



チョン・キョンファ(ヴァイオリン)

 1-3:アンドレ・プレヴィン(指揮)ロンドン交響楽団

4-6:ルドルフ・ケンぺ(指揮)ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

7-8:シャルル・デュトワ(指揮)ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団



[録音] 1970 年6 月(1-3)、1972 年5 月(4-6)、1977 年4 月(7-8)、

ロンドン、キングスウェイ・ホール



[LP 初出]

1-3: SXL6493(1971 年)

4-6: SXL6573(1973 年)

 7-8: SXL6851(1979 年)



[日本盤LP 初出]

1-3:SLC2000 (1971 年3 月)

4-6:SLC2310 (1973 年3 月)

7-8:SLA1228 (1979 年10 月21 日)



[オリジナル・レコーディング]

[プロデューサー]クリストファー・レーバーン(1-3、7-8)、レイ・ミンシャル(4-6)、

[レコーディング・エンジニア]ケネス・ウィルキンソン(1-3、7-8)、ジェイムズ・ロック(4-6)

[Super Audio CD プロデューサー]大間知基彰(エソテリック株式会社)

 [Super Audio CD リマスタリング・エンジニア]杉本一家

(JVC マスタリングセンター(代官山スタジオ))

[Super Audio CD オーサリング]藤田厚夫(有限会社エフ)

[解説]諸石幸生 長谷川勝英

[企画・販売]エソテリック株式会社

[企画・協力]東京電化株式会社